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宇宙の大規模構造

高

よみ方

うちゅうのだいきぼこうぞう

英 語

large-scale structure of the universe

説 明

宇宙空間における銀河の分布には特徴的な疎密が見られる。大部分の銀河は、銀河団及び銀河団をつなぐフィラメント状構造に属しており、このフィラメントに囲まれるようにしてボイドと呼ばれる低密度の領域が存在する。銀河団とそれらをつなぐフィラメント状構造およびボイドが織りなす構造のことを宇宙の大規模構造という。
宇宙の大規模構造は、せっけんの泡がくっつきあっている様子に似ていることから泡構造とも呼ばれる。一つの泡(ボイド)の大きさは数10メガパーセク(数10 Mpc=1億光年)にも及ぶ。フィラメントでつながれた銀河群銀河団などは更に大きな超銀河団を構成する。
大規模構造は、宇宙の誕生時に存在した微小な量子ゆらぎが、インフレーションによって空間的に何十桁も拡大し、その後の時間経過と共に大規模構造に成長していったと考えられている。なおインフレーション後にあった物質分布の揺らぎのみでは大規模構造はできず、冷たいダークマターの存在が大規模構造形成に大きな働きをした。局所超銀河団ラニアケア超銀河団インフレーション理論2MASSも参照。


宇宙の大規模構造形成のシミュレーション。ダークマターハローの形成・進化(Ⅲ. 網目構造・ボイド構造の形成)」[クレジット] シミュレーション:石山智明 可視化:中山弘敬 国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト

https://www.youtube.com/embed/qiprMBDnUFU?si=GChe9IaYO1sKe90S"

2024年04月08日更新

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    宇宙の大規模構造。スローン・デジタルスカイサーベイで得られた銀河の三次元分布を、天の赤道を含む平面で切った断面図である(厳密には断面ではなく,表示する銀河の数を確保するために赤緯-1.25°から+1.25°までの銀河を含めてある)。銀河系は図の中心にあり、一つの点は一つの銀河を表す。
    銀河系から円の外周までの距離は約600メガパーセク(20億光年)である。断面全体にわたって大規模構造が見られる。データのない部分は、銀河系の円盤に邪魔されて観測できなかった天域である。なお、点の色は銀河の年齢を表し、赤いものほど古い。古い銀河ほど分布のコントラストが高いことが見て取れるが,これは銀河の環境効果の一つである。
    http://www.sdss3.org/science/gallery_sdss_pie2.php
    2ミクロン全天サーベイ(2MASS)で得られた150万個以上の銀河と約5億個の恒星の天球上の分布を示した図(銀河座標系)。恒星は図の中心を通る水平な横から見たレンズの形をしているが、これは銀河系を真横から見た姿である。主な銀河団の名称と距離あるいは赤方偏移z(括弧内に示された数値)が示されている。銀河は赤方偏移に従って色づけされている。青/紫色は近傍(z < 0.01)、緑色は中間的な距離(0.01 < z < 0.04)、赤色は2MASSの観測限界に近い遠方 (0.04 < z < 0.1)の銀河である。天球上の分布であるが色分けによって宇宙の大規模構造が垣間見える。
    https://commons.wikimedia.org/wiki/File:2MASS_LSS_chart-NEW_Nasa.jpg
    元の出典は
    "Large Scale Structure in the Local Universe: The 2MASS Galaxy Catalog", Jarrett, T.H. 2004, Publ. Astron. Soc. Australia, 21, 396
    宇宙大規模構造の存在をはじめて示唆した図。かみのけ座銀河団とA1367銀河団を含む領域にある15等級より明るい銀河ほぼすべて238個の赤方偏移から奥行き方向の距離を求め空間分布として示した図。銀河系は三角形の頂点にある。右図の線で示されているように、二つの銀河団を結ぶ架け橋(フィラメント)のような構造や、銀河のほとんどない領域があることがわかった。
    原図は Gregory & Thompson 1978, ApJ, 222, 784

    *「宇宙の泡構造」という語の根拠とされた大規模構造の図。上段は赤経8時から17時(角度にして120度)、赤緯+8.5度から+50.5度の領域にある15.5等級より明るい銀河の天球上の分布。中段は上段にスライス1とスライス2で示す細い帯状の領域にある銀河の赤方偏移から得られた後退速度を奥行きに取った銀河の空間分布図。扇型をしているのでウェッジダイアグラムという。銀河系は扇の要の位置にある。下段は中段の二つの扇を重ねた図。二つのスライスの空間分布がよく似ているので、宇宙大規模構造は糸のような一次元の構造ではなく、膜の表面のような二次元の構造であることがわかった。
    (Geller et al. 1987, IAU Symp., 124, 301 にある図から構成)
    初めてボイドの存在を示した図。左はうしかい座の赤経約14時から16時、赤緯+30度から+70度の天域にある銀河の空間分布を示すウエッジダイアグラム。円がボイドを示す。円の中にあるように見える銀河は赤経(この図で紙面に垂直な)方向で手前と向こうにある。このことは右の二つの画像(左図の破線部分)を立体視すると分かる。
    Kirshner et al. 1987, ApJ, 314, 493の原図を改変