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ハレーション(写真の)

 

よみ方

はれーしょん(しゃしんの)

英 語

halation

説 明

強い光源を撮影した写真において、光源の周りが広い範囲にわたって白くにじんでしまう現象、またはそのパターンのこと。写真乾板や写真フィルムの写真乳剤層を透過した光がフィルムやガラスの裏面で反射されて再び乳剤に戻ることを繰り返し、広い範囲を感光させてしまうために生じる。写真乾板とフィルムに特有の現象であり、CCDなどを検出器とするデジタルカメラでは起こらない。カメラレンズ内での多重反射が原因のフレアやゴーストとよく混同されるが、成因が異なる。
天体写真では明るい星の回りにできるリング(ハレーションリング)が最も目立つパターンである。写真乾板の場合のハレーションリングの成因と星(点像)の回りの写真濃度(黒み)の半径分布を図1に示した。一点Aで乾板に垂直に入射した光は乳剤層で吸収・散乱されながら一部は乳剤層を透過する。入射光と透過光のなす角度をθとし、ガラスの裏面で透過光が全反射される角度をθ0とすると、この透過光が全反射されて再び乳剤層に到達する点のAからの距離r0
r_0 = 2d/\sqrt{n^2-1}
で与えられる。ここで、n d はそれぞれガラスの屈折率と厚みである。θ θ0 より小さいと、入射光の一部はガラスを抜け出してしまうので、濃度分布は r0の位置にピークを持ち、写真上ではリング(円)になる。星が極めて明るい場合には、全反射が2回繰り返されて2重のハレーションリングが見えることがある(図2)。ハレーションによる点光源(恒星)の像の細かな様子は乳剤の散乱度、ガラスやフルムなど乳剤の支持体の性質などで微妙に変わる。ハレーションを軽減するために乳剤層と反対側のガラス面にハレーション防止材料を塗布した写真乾板もあった。
ハレーションリングに重なって4本や6本の放射状の線が見えることがあるが、これは望遠鏡の副鏡を支持する足(スパイダーと通称される)による回折の影響で、ハレーションによるものではない(図2, 図3)。

2022年01月23日更新

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    関連画像

    * 図1 ハレーションリングの起きる原因とその濃度分布
    出典 岡村定矩 「天体写真測光」現代天文学講座11巻『宇宙の観測Ⅰ』(恒星社)1981年
    * 図2 木曽シュミット乾板(K4741: ⅡaO+GG385, 10分露光)の像に見られる1等星アルタイルのハレーションリング。明るい星なので2番目のリングも見えている。星像にはスパイダーによる4本の回折パターンとイラジエーションの効果も見られる。
    SMOKA Kiso Schmidt Plate Archive Searchから取得したデジタル画像のコントラストを調整したもの。
    https://pplate.nao.ac.jp/KSPsearch
    暗黒星雲1
    * 図3 木曽観測所のシュミット望遠鏡で撮影した馬頭星雲。馬頭星雲の真上の明るい星(ζ Ori)にきれいなハレーションリングが見られる。スパイダーによるパターンはこれ以外のいくつかの明るい星で見られる。
    (東京大学木曽観測所提供)