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変則的セファイド

 

よみ方

へんそくてきせふぁいど

英 語

anomalous Cepheid

説 明

セファイド変光星は、恒星主系列段階を終えたのち巨星となり、中心核でヘリウム燃焼が起こっている段階でHR図上のセファイド不安定帯(脈動不安定帯ともいう)と呼ばれる領域を通過する際に動径脈動が励起され、脈動変光星となっている恒星である。セファイド不安定帯はHR図上の狭い表面温度範囲で上下に伸びる帯状領域で、そこを横切る時の光度が大きいほど脈動周期が長いので、セファイド変光星には周期-光度関係が存在する。

変則的セファイド(アノマラスセファイドともいう)の周期-光度関係(図中赤色の線)は、通常の(古典的)セファイドの周期-光度関係とタイプII セファイドの周期-光度関係の中間に位置する。古典的セファイド変光星は、太陽質量の約4倍よりも重い星の中心でヘリウム燃焼が起きている段階でHR図上の不安定帯を通過するので、もっとも明るい周期-光度関係を持つ。一方、タイプIIセファイドは種族 IIの小質量星が中心ヘリウム燃焼が終わった後の段階で不安定帯の中に入って脈動する脈動変光星なので、その周期-光度関係は古典的セファイドの関係よりも暗い。種族 IIの星が中心ヘリウム燃焼段階に不安定帯を通過する際、周期1日程度以下の脈動をするが、このタイプの変光星は、こと座RR型変光星(RR ライリ)と呼ばれ、セファイドとは呼ばれない。

変則的セファイドの周期-光度関係は通常の単独星の進化段階としては説明が難しく、近接連星系(連星を参照)での質量移動または恒星合体による説明も考えられている。また、変則的セファイドは球状星団には存在しないが、矮小銀河で多く存在することが知られている。

2024年09月10日更新

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    大マゼラン雲(LMC)中の種々のセファイド変光星の周期-光度関係。黒線は通常の古典的セファイド、青線は種族Ⅱの恒星であるタイプⅡセファイド、赤線は変則的セファイドを表す。実線は基本脈動で脈動するセファイドの周期-光度関係で破線は第一倍脈動(first-overtone pulsation)で脈動するセファイドの周期-光度関係を表す。
    (Soszynski et al. 2015, AcA 65, 233 による関係を使用)