恒星間天体
よみ方
こうせいかんてんたい
英 語
interstellar object
説 明
星間空間に存在する星間物質(ガス)以外の天体。どの恒星にも重力的に束縛されていない。太陽系の彗星、小惑星、岩石惑星などと同種のものが多いと思われるが、たまたま太陽系に侵入し、人類が観測した例はこれまでに3例しかないので、詳しいことはまだ分かっていない。
最初の例は、2017年10月19日に、ハワイのマウイ島ハレアカラ山頂にあるサーベイ観測のための専用望遠鏡Pan-STARRS1(PS1)により発見されたオウムアムアである。2例目は2019年8月30日にアマチュア天文学者によって発見されたボリソフ彗星である。さらに2025年7月1日にハワイ大学が運営する南米チリの「ATLAS(Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System;小惑星地球衝突最終警報システム)」が3例目のATLAS彗星(3I/ATLAS)を発見した。発見時点では太陽から約7億km、地球から約5億kmほど離れたところにあり、太陽に向かってきている。2025年10月末に太陽に最接近(距離2億km)し、その後12月20日ごろに地球と最接近する。
ATLASのようなプラネタリーディフェンスの活動が盛んになり、さらに、オウムアムアを発見したPan-STARRS1に加えて、広い天域を高速・高頻度でモニター観測ができるトモエゴゼンのようなカメラによる観測や、ベラルービン天文台で行われる時空間レガシーサーベイ(Legacy Survey of Space and Time: LSST)が進めば、これまで見逃されていたかもしれない高速で移動する天体の発見数が増え、そのような天体の軌道決定もなされるようになる。
恒星間天体が多数発見され、それらの物理的・化学的性質の理解が進めば、太陽系外天体の形成環境の情報が次第に分かってくると期待される。隕石が地球外物質を地球に持ち込み、太陽系天体の組成を分析する機会を与えたように、恒星間天体は太陽系外惑星系で形成された物質を観測・分析する機会を与えてくれる恒星からの使者である。
2025年08月22日更新
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