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ヤルコフスキー効果

 

よみ方

やるこふすきーこうか

英 語

Yarkovsky effect

説 明

太陽の周りを公転している天体が太陽からの放射を受けて温められると、熱放射の際に反作用として力を受ける。天体表面に温度差があると、この力が非等方的となって天体は正味の力を受け、天体の軌道運動が変化する。この効果のことを、最初にこのことを見出した研究者にちなんでヤルコフスキー効果と呼ぶ。ヤルコフスキー効果には、日周効果と季節(年周)効果がある。
簡単のため、太陽の周りの平面円軌道上を、軌道面に垂直な自転軸を持って自転しながら運動する天体を考える。天体の太陽に面した部分は太陽からの放射を受けて温められるが、熱慣性のため、温度が最も高くなるのは太陽方向より、やや自転の方向にずれた部分である。したがって天体表面からの熱再放射の際に受ける反作用は、この部分から天体の中心に向かう方向に最も強く働く。この効果により、天体が順行自転している場合には天体の軌道角運動量は増加して軌道半径が拡大し、逆行自転のときには軌道半径が減少する(日周ヤルコフスキー効果)。
一方、自転軸が軌道平面内にあり横倒し状態で公転する天体の場合、同じく熱慣性のため、極の部分が最も高温になるのは、公転運動の途中で自転軸が太陽の方向と一致したときよりもやや後であり、熱再放射の反作用としての力もそのときに最大となる。その結果、1年で平均すると、熱再放射の反作用としての力は天体の軌道運動方向とは逆の成分を持ち、抵抗として働いて天体の軌道半径を減少させる(季節ヤルコフスキー効果)。
ヤルコフスキー効果は、mからkmサイズの小惑星の軌道進化において重要な役割を果たしたと考えられている。同様の効果により、非球対称の天体の自転角速度が変化する。この効果は、これについて先駆的な研究を行った4人の研究者(ヤルコフスキー(I. Yarkovsky)、オキーフ(J. O’Keefe)、ラジエフスキー(V. Radzievskii)、パダック(S. Paddack))の頭文字より、YORP効果と呼ばれる。

2018年03月09日更新

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