平衡状態
よみ方
へいこうじょうたい
英 語
equilibrium
説 明
相反する2つ以上の過程が均衡しているため、全体の様子に変化が生じないこと。2つ以上の力がつり合っている力学的平衡、互いに逆方向に進む化学変化が同速度で進んでいる化学的平衡、エネルギーや圧力が均衡している熱力学的平衡などがある。
初期宇宙は高温・高密度状態にあったとよくいわれるが、温度という概念が正確に定義できる熱平衡状態が成り立つためには、巨視的に見て静的な状態が実現していなければならない。実際には宇宙は膨張しているので、膨張の時間スケールすなわち宇宙年齢に比べて反応の起こるタイムスケールが十分短くなければ熱平衡状態は実現しない。宇宙に存在する物質粒子同士の反応にはさまざまな強度のものがあるので、その種類によって十分速く起こるかどうかは異なっている。反応の早さと宇宙膨張率の比較により、平衡状態は以下の3つに分類できる。
1. 運動学的平衡(kinetic equilibrium)
反応の前後で粒子の種類の変わらない、弾性散乱のみが活発に起こっている状態。これによって粒子のエネルギー分布は平衡状態となり、ボース粒子はボース統計、フェルミ粒子はフェルミ統計に従う。しかし各成分の化学ポテンシャルの間には特段の関係はない。
2. 化学平衡(chemical equilibrium)
上記の反応に加え、反応前後で粒子の種類が変わるような反応も宇宙膨張より早く起こっている状態。分布関数の形は運動学的平衡の場合と同じだが、反応の前後の化学ポテンシャルの総和が等しくなる。
3. 熱平衡(thermal equilibrium)
最上位の平衡状態であり、考え得るすべての反応が宇宙膨張よりも早く起こっている状態である。非保存量に対応した化学ポテンシャルはすべてゼロになる。
2018年03月23日更新
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