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アンテナ利得

 

よみ方

あんてなりとく

英 語

antenna gain

説 明

特定の方向について、それ以外の方向に比べてどの程度の感度を持つかを示す量で、どの方向に対しても一様に感度を持つ無指向性アンテナを基準とする。アンテナの性能を表す量の1つ。方向依存性まで含む場合は、ビームパターンと同一の概念である。同じ大きさの同じ光学系であっても波長によって異なる。アンテナの全ビーム立体角\Omega_{\rm A}が無指向性アンテナに比べてどれだけ絞り込まれているかを表すアンテナの指向性は、D=\frac{4\pi}{\Omega_{\rm A}}で与えられる。これにアンテナのオーム抵抗による損失やアンテナの不完全性(鏡面誤差など)による損失などの効率\alpha (\alpha \le 1)を掛けたG=\alpha Dをアンテナ利得という。単位は通常、デシベル(dB)で表す。世界の電波望遠鏡のアンテナ利得の例を下図に示す。一般に波長の2乗に比例して\Omega_{\rm A}が大きくなるので、アンテナ利得を波長の関数として表す曲線はある波長でピークを持ち、波長が長くなるにつれて右下がりとなる。またピークより波長が短いところでは鏡面誤差の影響が大きくなるので利得が低下する。ビームパターンも参照。

2018年09月05日更新

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    関連画像

    *世界の主な電波望遠鏡のアンテナ利得の波長依存性。IRAM 30m鏡:ミリ波電波天文学研究所,JCMT 15m鏡:ジェイムズクラークマクスウェル望遠鏡,エッフェルスベルク100m鏡:エッフェルスベルク電波天文台,野辺山45m鏡:野辺山宇宙電波観測所,グリーンバンク100m鏡:GBT100-m電波望遠鏡,アレシボ305m球面鏡:アレシボ天文台。
    亀野誠二「世界の干渉計型電波望遠鏡」、シリーズ現代の天文学第16巻、中井・坪井・福井編『宇宙の観測II』3.3節 図3.6(日本評論社)