荷電粒子が原子核に近づくと、そのクーロン場内で加速度運動を行い電磁波が放出される。この現象およびそれによる放射を制動放射と呼ぶ。電子のエネルギーを $E$、電磁波の周波数を $\nu$ とすると、制動放射のスペクトルは $0\le \nu \le E/h$（$h$ はプランク定数）の範囲でほぼ平坦である。

電磁波の放射に伴い電子は次第にエネルギーを失う。周りの物質が完全電離状態にある場合、原子核の荷電数を $Z$、その数密度を $N{\mathrm{m}}^{-3}$ として、相対論的な電子（ローレンツ因子 $\gamma =E/m_{\mathrm{e}}{c}^2\gg 1$）のエネルギーの変化率は、

$$-\left(\frac{dE}{dt}\right)=\frac{3}{2\pi }{\sigma }_{\mathrm{T}}c\alpha Z(Z+1)N[{\log }_e\gamma +0.36]E$$

と表される。ここで、${\sigma }_{\mathrm{T}}=8\pi e^4/3m_{\mathrm{e}}^2{c}^4$ はトムソン散乱断面積 （$0.665\times {10}^{-28}{\mathrm{m}}^2$、$e$ は電気素量（素電荷）、$m_{\mathrm{e}}$ は電子の質量、$c$ は光速度）、$$\alpha =e^2/hc$$ は微細構造定数（1/137.036)である。自由-自由放射、熱制動放射も参照。