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丙午(ひのえうま)

 

よみ方

ひのえうま

英 語

対応する英語なし

説 明

丙午(ひのえうま)は干支の一つ(43番目)である。「丙午の年に生まれた女性は気性が激しすぎて夫を不幸にする」という科学的根拠のない迷信の影響で、丙午の年である明治39(1906)年生まれの女性には、将来を悲観して自殺するなど多くの悲劇が起きた。

中国では「丙午」と「丁未」の年は天災が多いと言われていたが、それが江戸時代初期に「丙午の年には火災が多い」という根拠のないうわさに変わったことがもとだと言われている。17世紀の文献には、「丙午の男は妻を殺し、女は夫を殺す」などとあり、男女の区別はない時代もあったらしい。ところが、天和3年(1683年)に江戸で放火事件を起こし処刑された「お七」という女性のことを、「八百屋お七」の物語として井原西鶴が浮世草子に書いた貞享3年(1686年)以降、お七は丙午の生まれとされた(諸説ある)ことから、女性の結婚と出産に関する強い迷信となったといわれている。

人口1万人あたりの出生数でみると1906年の丙午は前年の311.62人から296.42人まで5%低下している。次の丙午の1966年には、前年の185.57人から137.42人まで26%も急減している。5%しか低下しなかった1906年との大きな違いは、簡便な避妊方法の普及により出生を調節できた影響が大きかったと考えられている。2026年に次の丙午が巡ってくる。

大阪教育大の2022年度卒業論文に、丙午に関するアンケート調査を行ったものがある(注1)。その論文によると、1966生まれの142人(うち女性56%:当事者)と18-25歳の大学生210人(うち女性83%)に尋ねた結果、当事者の半数近くが「丙午生まれで嫌な思いをしたことがある」と答えたが、「結婚や出産を避けるべきだ」と考える人は1%で、否定的にとらえている人はほとんどいなかった。一方若い大学生では、言葉も意味も理解している人は11%であったが、迷信を伝えた上で信じるかどうかを尋ねると23%が「信じる」とし、女性の37%は丙午の出産を「気にする(避けたい)」と答えた。また、2026年に「出生数が低下する」と考える人は60%に上った(注1)。

科学的根拠の全くない迷信でもいったん広く信じられてしまうとその払拭には長い時間がかかることが分かる。インターネットを通じて誰でも簡単に情報発信できる時代になった。偽情報や悪意のある情報は言うまでもないが、科学的根拠のない話や迷信を不用意に拡散させることがないよう十分留意すべきである。
注1:大阪教育大学 https://osaka-kyoiku.ac.jp/university/kouhou/detail.html?pno_5657=2 (2023.04.06)
読売新聞オンライン https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20230405-OYO1T50028/

2024年04月03日更新

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    1872年以降の出生数の推移。
    https://nenji-toukei.com/n/kiji/10011 の図に説明を加筆