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アストロメトリ

 

よみ方

あすとろめとり

英 語

astrometry

説 明

位置天文学あるいは天体位置測定学と訳す。個々の天体の天球面上での位置を測定して、天体の同定や運動の研究を行う学問。単に天体の方向を計測するだけでなく、年周視差による距離計測、長期間の位置観測による固有運動の計測も含む。古くから研究が進み、すでにやりつくされた感もあったが、ヒッパルコス衛星超長基線電波干渉計(VLBI)の登場により飛躍的に観測精度が向上し、これまでの地上からの望遠鏡による観測でははっきりわからなかった物理量が精度よく求まるようになり、新たな意義を獲得しつつある。
天体の絶対的位置の測定には、天体自体の固有運動、地球の公転運動による年周視差や光行差、地球自転軸の歳差運動や章動、地球大気の屈折による大気差、観測光学系の収差による像面湾曲や歪曲などさまざまな要因の補正が必要となる。これらの補正を行った天体位置カタログとして、ヒッパルコス衛星によるヒッパルコスカタログとティコ(タイコ)カタログ、 アメリカ海軍天文台によるUCAC2カタログとUSNO B1.0カタログなどが公開されていて、異なる波長域や観測装置で観測した天体データを照合したり、個々の天体の位置変動からその運動を解析するのに用いられる。
日本のVERAプロジェクトは、電波干渉計を用いて10マイクロ秒角に迫る精密な位置測定を行っている。世界初のアストロメトリ専用の衛星としてヒッパルコス衛星が1989年に打ち上げられ大きな成果を挙げた。これを受けてガイア衛星が2013年12月に打ち上げられ、2016年9月に最初の約1年間分の観測に基づくデータを公開した(Gaia-DR1)。その後も観測は順調に進み、2018年4月(Gaia-DR2)と2020年12月(Gaia-EDR3)にも段階的にデータ公開が行われ、2022年6月に3回目のデータ公開(Gaia-DR3)が行われた。観測天体数は18億個にも上り、約14億7000万個の星の位置、年周視差、固有運動が測定された。ヒッパルコス衛星の精度が1ミリ秒角程度であったが、2桁近い精度の向上が実現している。

2024年11月14日更新

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