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SLIM

 

よみ方

すりむ

英 語

SLIM

説 明

 小型月着陸実証機SLIM(Smart Lander for Investigating Moon)は、
・月の狙った場所へのピンポイント着陸
・着陸に必要な装置の軽量化
・月の起源を探る
といった目的を小型探査機で実証しようとする、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の探査計画。ピンポイント着陸を目指したことから、「ムーンスナイパー」とも呼ばれる。2023年9月7日にH-IIAロケット47号機で種子島宇宙センターから打ち上げられ、2024年1月20日に日本初となる月面への軟着陸を達成、史上初となるピンポイント着陸にも成功した。これにより日本は旧ソ連、米国、中国、インドに次ぎ、月面への軟着陸に成功した世界で5カ国目の国となった。
 SLIMは月周回衛星「かぐや」等によって作成された月面地図を持ち、搭載された航法カメラで撮像した画像と照合する「画像照合航法」で自身の位置を推定しながら、「神酒の海」付近のシオリ(SIORI)クレータ近傍への軟着陸を目指した。1月20日0時頃から自律的に月面への降下を開始、途中で2つあるメインエンジンの片方の推力が失われ、当初の目標地点から東側に55m程度流されたが、「誤差100 m 以内」の目標を達成し、2時10分頃に上下逆の鉛直倒立状態で太陽電池を西に向けて着地した。着地直前には小型プローブLEV-1とLEV-2(愛称SORA-Q)の放出にも成功、LEV-2 が撮影した逆さまのSLIM写真が公開された。
 着陸当初は太陽電池パネルに太陽光が当たらず、バッテリー保護のため着陸後50分ほどで電源が切られたが、1月28日に太陽電池パネルに光(西日)が当たるようになったとして運用を再開、中断していたマルチバンド分光カメラ(MBC)によるシオリクレータ周辺のかんらん石の撮影などが行われた。月の公転周期 (恒星月)は約27.3日なので、一度日が沈むと約半月間夜が続く。SLIMはその前の1月31日に休眠状態に入り、−170℃とも言われる月の夜の期間を耐えて2月25日に通信が回復、その後も3月1日休眠、3月27日回復、3月30日休眠、4月23日通信再開と、3度の越夜に成功した。しかし、5月下旬、6月下旬の通信は回復しなかった。

2024年06月30日更新

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    月面に降下するSLIMのイメージ(Credit: JAXA)
    LEV-1を経由して地上へ転送された、LEV-2が撮影した画像。SLIMが倒立状態になっており、上部にメインエンジンの噴射ノズルが一つしか見えないことから、片方は脱落したと見られている。
    (Credit:JAXA/タカラトミー/ソニーグループ(株)/同志社大学)