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カッパ機構

 

よみ方

かっぱきこう

英 語

kappa mechanism

説 明

カッパ(κ)機構 (kappa mechanism) とは、恒星内部から外側に向かう放射エネルギーの流れ効率の変化によって恒星の脈動が自発的に引き起こされる機構をいう。カッパ(κ)とはガスの不透明度(opacity)のことなので、opacity mechanism といわれることもある。

通常のガスの状態では、不透明度は温度が上昇すると減少し、エネルギーが流れやすくなる。そのため、微小振動で圧縮され温度が上昇した層では、エネルギーが失われ、次に起こる膨張が弱くなり、微小振動は減衰する傾向となる。しかし、恒星のガスを構成する元素またはそのイオンが不完全電離の状態となっている層では、温度が上昇した際、不透明度が逆に大きくなるか、または、減少が抑えられる。そのような層では、圧縮の際に不透明度が増大し、エネルギーの流れが堰き止められ、その層に吸収される。そのエネルギーは次に起こる膨張を強くするので脈動を少しずつ成長させる効果を持つ。星全体として、減衰効果よりも成長効果の方が優っているとき、かっぱ機構による脈動が発生する。

図に示されているように、恒星内部で高温になるにつれて重い元素の不完全電離層が現れ、不透明度と温度の関係に’コブ’が現れる。原理的には、各不完全電離層でカッパ機構が働くが、内部深くの密度の高い場所では熱交換のタイムスケールが長いため脈動は断熱的に起こり、影響は非常に小さい。逆に、密度が非常に小さい表面近傍では熱交換のタイムスケールが非常に短く、ガスの不透明度の変化に関わらず、脈動の間に熱が自由に通過してしまいカッパ機構は働かない。熱的タイムスケールがおおよそ脈動の周期程度となっている(表面からより少し内側に位置する)層で、ある元素が不完全電離の状態となっている場合に、カッパ機構によって脈動が起こる。そのため、星の表面温度によって、どの元素のカッパ機構が重要であるかが決まる。例えば、HR図上でセファイド不安定帯のなかに位置する、セファイドRRライリ型脈動星などはは数万度の層にあるHe+ の不完全電離層のカッパ機構で起こり、B型星のベータセファイド、低速脈動B型(SPB)星の脈動は数十万度での鉄の不完全電離層のカッパ機構で起こっている。さらに、O型星のDOV(PG1159)星の脈動は数百万度にある炭素酸素の不完全電離層のカッパ機構で起こっている。

2024年10月18日更新

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    ガスの不透明度が温度と密度の変化でどのように変化するかを表した図。図中H,He, He+, Fe, およびC,Oはそれぞれの元素が電離を起こす温度を表している(He+1階電離したヘリウムを表す)。それらの温度ではそれぞれの元素が不完全電離の状態となっており、不透明度に’コブ’ができており、その層は恒星脈動の成長を助ける働きをする。より高温側ではそれらの元素は完全電離しており脈動を減衰させる効果を持つ。