ホイル
よみ方
ほいる
英 語
Hoyle, Fred
説 明
ホイル(Fred Hoyle;1915-2001)はイギリスの天文学者。定常宇宙論を提唱したほか、星の内部におけるヘリウム燃焼理論、元素の起源論、生命パンスペルミア説を唱えた。イギリス西ヨークシャー州ブラッドフォード近郊で生まれ、ケンブリッジのエマニュエル・カレッジに進学し、1939年にケンブリッジのセントジョンズ・カレッジのフェローに選ばれた。終戦後の1945年にはケンブリッジ大学の数学講師、1967年にケンブリッジの理論天文学研究所の所長となった。
星への星間物質降着をリットルトン(R. Lyttleton)とともに扱った後、星のヘリウム燃焼で炭素と酸素ができる反応で、原子核に新らしいエネルギー準位があることを見つけて三重アルファ反応の理論をつくった。星による元素の起源をバービッジ夫妻(J. & M. Burbidge)とファウラー(W.A. Fowler)とともにB2FH論文にまとめた。1947年にはボンディ(H. Bondi)、ゴールド(T. Gold)とともに宇宙の構造と性質を説明するモデルとして「定常宇宙論」を提唱した。この理論は、宇宙が膨張していることを基礎としているが、物質も同時に作られているから、密度は常にどこでも一定としている。ガモフらの理論を揶揄した「彼らは宇宙がどでかい爆発(ビッグバン)から始まったなどと言っている」との発言をガモフが気に入って、自分たちの理論をビッグバンとしたのは有名な話である。(後年ホイルは揶揄する意味は微塵もなく、とっさに思いついたものと語っている。)さらにホイルは、ベーテ(H. Bethe)による水素ヘリウム転換説を発展させ、炭素や酸素、鉄の生成、そして、超新星爆発による重元素の生成と第二世代の星の形成まで考えている。
多数の科学啓蒙書の執筆でも知られており、『天文学の最前線』(1968)、『宇宙の本質』(1975)など、多くの著書がある。また、生命の起源については宇宙起源のパンスペルミア説を主張し、ウィクラマシン(C. Wickramasinghe)と共著の『生命(DNA)は宇宙を流れる』『生命はどこからきたか』などがある。SF作家としても有名で、『暗黒星雲 (The Black Cloud)』(1957)、『秘密国家ICE (Ossian's Ride)』(1959)、『アンドロメダのA (A For Andromeda)』(1962/共著:ジョン・エリオット)など、多くの著作を手がけた。
1970年にブルース・メダル、1974年に王立協会ロイヤルメダルを受賞し、1972年にはナイトに叙せられている。
追悼記事:http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/1503721.stm
https://www.nature.com/articles/35095162
2024年11月23日更新
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