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漸近巨星分枝

 

よみ方

ぜんきんきょせいぶんし

英 語

asymptotic giant branch

説 明

中心部でのヘリウム燃焼を終え、中心核の周りでヘリウムや水素の殻燃焼を行う段階にある中小質量星がHR図上で形成する系列。質量が太陽の約8倍より小さい場合には、ヘリウム燃焼で生じた炭素と酸素からなる中心核で電子が縮退し、次の核融合反応が起こらない。かわりに、ヘリウム層の外側で水素の殻燃焼が生じ、星は膨張する。これにより、HR図上で赤色巨星分枝に近い系列が形づくられ、漸近巨星分枝と呼ばれる。このため、この段階の星は英文の頭文字からAGB星と呼ばれることが多い。水素殻燃焼の結果、ヘリウム層の質量が大きくなると、ヘリウム燃焼が暴走的に起こる(ヘリウム殻フラッシュ)。ヘリウム層の質量が減るとフラッシュは収まり、水素殻燃焼が再び始まる。漸近巨星分枝の星ではこのサイクルが繰り返し起こり、その生成物である炭素や重元素s過程元素)が表面に現れることがある。これにより、漸近巨星分枝の星はスペクトル型として、M型星のほか、炭素が相対的に過剰な炭素星やS型星などになる。

2018年09月30日更新

関連画像

漸近巨星分枝星であるちょうこくしつ座R星のまわりの渦巻き構造とそれを取り囲む球殻構造。アルマ望遠鏡で撮影。
(クレジット:ALMA ESO/NAOJ/NRAO)。
https://alma-telescope.jp/news/press/mt-_-2
太陽と同じくらいの軽い質量の星のHR図上での進化路。横軸は対数表示の有効温度、縦軸は対数表示の太陽光度で規格化した光度。漸近分枝進化は早期漸近分枝進化と熱パルス漸近分枝進化に分かれる。括弧内の数字はそれぞれの進化段階での経過時間、単位は年。
吉岡一男著『宇宙とその進化』第5章(分担執筆有本信雄)。放送大学印刷教材
太陽の5倍の質量の星のHR図上での進化路。横軸は対数表示の有効温度、縦軸は対数表示の太陽光度で規格化した光度。
吉岡一男著『宇宙とその進化』第5章(分担執筆有本信雄)。放送大学印刷教材。