ストレムグレン球
よみ方
すとれむぐれんきゅう
英 語
Strömgren sphere
説 明
球対称形状の電離水素領域のモデル。質量の大きな主系列星は、表面温度が十分に高温で、大量の紫外線を放射する。そのため、大質量星の周りにある水素ガスは912 オングストロームより短波長の(13.6 eVより高エネルギーの)紫外線電離光子によって電離し、HII領域(電離水素領域)を形成する。
ストレムグレン球とは、1つの大質量星の周りに個数密度 $n$ の一様な水素原子ガスが十分遠くまで分布している場合を考え、星間ダストの存在を無視して導出した電離水素領域の簡単化したモデルである。この場合、電離領域は球対称に形成され、内部では、定常ならば電離と再結合とがつり合う。このときの電離領域の半径 $R_{\rm S}$ は、
$$Q =\frac{4}{3}\pi R_{\rm S}^3 n_{\rm e} n_p \alpha$$
で決まり、この $R_{\rm S}$ をストレムグレン(Strömgren)半径と呼ぶ。左辺の $Q$ は、単位時間あたりに大質量星から放射される電離光子の個数であり、右辺は、球内の電子(個数密度$n_{\rm e}$)と陽子(個数密度$n_p$)との衝突による再結合の単位時間あたりの回数である。ここで $\alpha$ は、水素イオンのすべての準位に自由電子が再結合する割合の総和で、再結合係数と呼ぶ。
実際の電離ガス領域では、$n = 1$ の基底状態への再結合の際に出る光子は、13.6 eV 以上のエネルギーをもつので、すぐに近くの中性水素原子を電離してしまい、実質的な再結合には寄与しない。そこで、実質的な再結合係数としては基底状態への再結合だけを除いて計算される場合が多い。
この実質再結合係数を$\alpha_B$ と書くと、近似的な式は、
$$\alpha_B = 2.6 \times 10^{-13}
\times(T/10^4\,{\rm K})^{-0.85}\,\,\,\,[{\rm cm^3\,s^{-1}}]
$$
となる。
2023年05月08日更新
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