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桜井天体

 

よみ方

さくらいてんたい

英 語

Sakurai's object

説 明

桜井天体(Sakurai’s Object; いて座 V4334星) は1996年にアマチュア天文家櫻井幸夫氏によって発見された。当初、光度変化の比較的遅いタイプの新星 (Slow nova) と考えられていたが、発見後の研究により、(伴星から降り積もった)白色矮星水素層の爆発的核燃焼で起こる新星ではなく、水素層より内部の薄いヘリウム層で暴走的ヘリウム核燃焼(ヘリウム殻フラッシュ または熱パルス)が起こって白色矮星の光度と半径が数年のタイムスケールで大きくなる現象であることが判明した。この現象は、本来漸近巨星分枝進化段階で繰り返し起こるヘリウム殻フラッシュが、漸近巨星分枝進化の最後の段階で、最外層の水素層が質量放出で非常に薄くなり、(漸近巨星分枝を離れて高温の)白色矮星への進化が始まった後に起こったもので、「最後の(または遅延した)殻フラッシュ(または熱パルス)」などと呼ばれる珍しい現象である。恒星進化の理論モデルによると、初期の膨張は数十年のタイムスケールで収縮に転じる。実際、広い範囲の波長による観測は、桜井天体が収縮に転じていることを示している。また、その表面には炭素などのヘリウム核燃焼生成元素が出てきており、質量放出によりダストが形成され大きな減光が起きていることなどが分光観測によって明らかになっている。

2024年10月02日更新

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