元期
よみ方
げんき
英 語
epoch
説 明
天体の天球上の位置を示す時刻をいう。天球座標系(ここでは赤道座標系)自体が時間変化すること、および同一の天球座標系に対して天体自体が移動すること(固有運動)の両方に対応する。前者は分点(equinox)とも呼ばれ、地球の歳差や章動などによって地球の自転軸が天球上を移動するために赤道座標系の基準(春分点)が変化することによる。このため、赤道座標には元期(分点)を明示する必要がある。一方後者は、当該分点の赤道座標系においてどの時刻における位置であるかを示すために必要である。
天球座標系の元期が不統一だと天体の座標の比較が煩わしいため、ベッセル年での1950年初(B1950.0と表記)やユリウス年の2000年初(J2000.0と表記)での値が用いられたものが多いが、古くは1900年初(局所静止基準に対する太陽運動の方向)や1875年初(星座の境界線)が用いられた例もある。しかし、いずれも地球の自転軸の向きを定める歳差章動理論の精度に左右されてしまうため、国際天文学連合(IAU)は1997年の総会で、これに依存しない基準座標系として国際天文準拠系(ICRS)を採択した。これにより、分点を意味する元期は不要となったが、時刻を意味する元期は引き続き必要である。
可視光による国際天文準拠系を最初に実現したヒッパルコス衛星によるヒッパルコスカタログの元期はJ1991.25で、電波観測に基づくICRFと合わせて構築した結果、基準座標系はICRSとなった。もともとICRS準拠で構築されたガイア衛星の第3次データ公開のカタログGaia-DR3の元期はJ2016.0である。
2025年10月06日更新
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