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人間原理

 

よみ方

にんげんげんり

英 語

anthropic principle

説 明

自然はそれを観測できる人間が存在し得るようにできている、という考え方。たとえばもしわれわれの宇宙が大きな真空のエネルギーを持っていたとすると、銀河ができる前に宇宙は加速的膨張期に入ってしまい、その後の銀河形成は不可能になり、人間が生存できるような環境ができないことになる。しかしわれわれの宇宙には人間が住んでいるから、その真空のエネルギーは小さいことが結論づけられる。このような論法が人間原理の一例である。これは論理学的には対偶命題に置き換えているということであり、本命題と対偶命題の真偽は一致するから、論理的には間違ったことをしているわけではない。

しかしながら人間原理には重大な問題がある。別の例でいうと、「なぜわれわれの宇宙は4次元か?」という質問に対し、人間原理は、「さもないと惑星の軌道が閉じないから」とか、「より高次元だと原子が安定に存在できないから」というような説明を与えてくれる。この説明は論理的には正しいが、現代高エネルギー物理学の最大の問題の一つであり、多くの碩学の頭を悩ましている、「いかにして余剰次元がコンパクト化したか?(あるいは、しているように見えるか?)」という問題に対して、何らの示唆も与えない。この例からわかるように、人間原理の与える解答は、物理学者が探求している解答とは性質を異にするものである。

2018年03月06日更新

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