ハッブルディープフィールド
よみ方
はっぶるでぃーぷふぃーるど
英 語
Hubble Deep Field
説 明
1. 最初のハッブルディープフィールド(HDF=HDF-N)
1995年12月18日から28日まで10日間連続して、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の広視野惑星カメラ2(WFPC2)を「おおぐま座」の一角に向けて、従来にない長時間露光を行い、深い(暗い天体まで写っている)画像を撮影した。差し渡し2.4分角のこの領域(満月の約1/150の面積)、および得られた画像を総称する呼び名がハッブルディープフィールド(The Hubble Deep Field: HDF)である。プロジェクトそのものもHDFと呼ばれることがある。観測は当時の宇宙望遠鏡研究所(STScI)の所長、ロバート・ウイリアムス(Robert Williams)の主導のもと、所長留め置き時間を使って行われた。
ターゲットとなった天域は、J2000.0分点で赤経12時36分49.4秒、赤緯+62度12分58秒の位置(おおぐま座)にあり、WFPC2の視野を反映して、一辺が約2.7分の少々不規則な形をしている(図1)。HSTの約150周回がこの領域の観測に当てられたが、地上からの観測の便宜を図るため、それを取り囲む隣接の8天域(flanking fields)の撮像にも10周回が当てられた(図2)。
HDFは4つのフィルター(バンドの中心波長 300,450,606,814 nm)で観測された。各バンドの露出時間と限界等級は以下に示されている.
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フィルター フレーム数 露光時間(s) 限界等級(AB mag;10σ)
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F300W 77 153700 26.98
F450W 58 120600 27.86
F606W 103 109050 28.21
F814W 58 123600 27.6
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全フィルター 露光時間 506950(140.8時間)
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地上からの観測ではほとんど何も見えなかった領域に2500個を超す微光銀河の姿が映し出されて、大きなインパクトを与えた。ケック望遠鏡により微光銀河の赤方偏移が測定され、赤方偏移がz=4を超える銀河も見つかった(図3)。このプロジェクトにより、スペクトルのライマン端より短波長の連続光の銀河間ガスによる吸収を検出するドロップアウト法が確立され、赤方偏移z=4を超える遠方宇宙の観測研究の道が開かれた。以下に述べるその後のHSTによる深宇宙観測撮像と区別するために、最初のハッブルディープフィールドはHDF-North(HDF-N)と略称されるようになった。
2. 引き続くハッブルディープフィールド
ハッブルディープフィールド(HDF-N)の大成功を受けて、その後1998年には南天の「きょしちょう座」の方向で、HDFと同じやり方でハッブルディープフィールドサウス(HDF-South: HDF-S)が撮影された。その結果は、「宇宙は大局的には一様である」とする宇宙原理と矛盾しないものだった。
さらに2003-2004年には2002年に搭載された新しい広視野カメラ(ACS)を用いて南天の「ろ座」の方向でハッブルウルトラディープフィールド(HUDF)が撮影された。その画像には赤方偏移z=6を超える銀河も映し出されていた。
2012年には、2002年6月から2012年3月までの約10年間に撮影されたHUDF領域の画像をすべて合わせ、総露光時間200万秒、約22.5日に上るハッブルエクストリームディープフィールド(Hubble eXtreme Deep Field: XDF)が公開された。これら1.と2.のハッブル宇宙望遠鏡による深探査天域をまとめてハッブルディープフィールド(The Hubble Deep Fields:複数形)と呼ぶ。
ハッブルディープフィールドの概要はヨーロッパ宇宙機関(ESA)による以下の記事が参考になる。
https://esahubble.org/science/deep_fields/
3. もう一つのディープフィールド
2013年から3年にわたり、840周回というハッブル宇宙望遠鏡の膨大な時間を投入したフロンティアフィールド(FF)のプロジェクトが行われた。これは6個の銀河団の深い画像を撮影し、重力レンズの効果を受けて明るくなった遠方の暗い銀河の観測を目指すものであった。観測データは以下で参照できる。
https://archive.stsci.edu/prepds/frontier/
2022年02月14日更新
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