ミランコビッチサイクル
よみ方
みらんこびっちさいくる
英 語
Milankovitch cycles
説 明
セルビア人で土木工学者から地球物理学者に転身したミランコビッチ(Milutin Milanković)が1910年代から40年代はじめにかけて提唱した、地球気候の長期的な変化が天文学的な要因によるとする仮説。ミランコビッチは、地球の公転軌道の離心率の周期的変化(約10万年周期)、自転軸の傾きの周期変化(約4万年周期)、及び自転軸の歳差運動(約2.6万年周期)の三つの要素の影響が合わさって、地球の高緯度帯に入射する日射量が変動し、地球の氷河期が始まったり終わったりするきっかけとなると考えた。彼は実際には、北半球の北緯65度の夏の日射量を1年かけて手計算で導き出した。
この仮説はミランコビッチが亡くなる1958年までに日の目を見ることはなかったが、直近の氷河期における気候の記録を広範に調査するCLIMAP(Climate: Long range Investigation, Mapping, and Prediction)プロジェクトの古海洋データを解析したアメリカのヘイズ(James D. Hays)、インブリー(Imbrie, J.)、シャクルトン(Shackleton, N. J.)が1976年にサイエンス誌に発表した論文で根拠となる証拠を発見し、その基本的考え方が広く受け入れられた。
過去100万年間の気候では、「氷期-間氷期」の約10万年周期の変動が卓越しているが、ヘイズ達の解析では約2万年と4万年周期の変動がもっとも顕著で、10万年周期は最も弱かった。これは「10万年問題」と言われている。この問題は現在でも完全に解明されているわけではないが、ミランコビッチサイクルに起因する日射量の変化が一種のペースメーカーとなって、大気(特にCO2濃度変化)-氷床-地殻・マントルからなる複雑な気候システムに作用し、非線形な相互作用が生じてそれが10万年周期を生み出していると考えられている。
2021年05月20日更新
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