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ハッブル宇宙望遠鏡

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よみ方

はっぶるうちゅうぼうえんきょう

英 語

Hubble Space Telescope(HST)

説 明

アメリカ航空宇宙局(NASA)がヨーロッパ宇宙機関(ESA)との協力の下で開発し運用する口径2.4 mの宇宙望遠鏡。1990年4月24日にスペースシャトル「ディスカバリー」によって打ち上げられ、高度約600 kmを約100分の周期で地球を周回している。宇宙膨張の発見者であるエドウィン・ハッブル(E. Hubble)にちなんでハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope: HST)と名付けられた。NASAのグレートオブザーバトリーズ(Great Observatories)シリーズ4機のうちの最初のものである。

HSTは前例のない望遠鏡で、運用期間中にスペースシャトルに回収して何回か定期的な修理と装置交換を行う予定であった(その後もこのような宇宙望遠鏡は存在していない)。このためのスペースシャトルのミッションはハッブル宇宙望遠鏡の修理ミッション(Servicing Mission: SM)と呼ばれた。打ち上げ直後の観測結果から、主鏡の研磨過程でのミスによりHSTはピンぼけ状態になっていることが判明した。このため、急遽対応策が検討され、スペースシャトル「エンデバー」による最初の修理ミッション(SM-1)が1993年12月に行われた。11日間を要したこのミッションは、複数の宇宙飛行士の複雑な船外活動を伴う大規模で極めて困難なものであった。ピンぼけ補正のための補正レンズに相当する光学部品(COSTAR)を組み込み、それに合わせて広視野/惑星カメラ(WF/PC)を更新(WF/PCからWFPC2へ)、さらに太陽電池パネルも交換するなど多くの作業が行われた。SM-1の成功によりHSTは所期の性能を達成した。

HSTは紫外線から赤外線までの波長で、撮像と分光の機能を持つさまざまな観測装置を搭載していた。SM-1に続く修理ミッションによって、当初の観測装置は、Fine Guidance Sensor (FGS) 以外はすべて逐次新しいものと交換された。2019年現在用いられている装置は以下のものである。
Advanced Camera for Surveys (ACS)  可視光の広視野撮像装置
https://www.nasa.gov/content/hubble-space-telescope-advanced-camera-for-surveys
Wide Field Camera 3(WFC3) 紫外線と赤外線に感度を持つ撮像装置
https://www.nasa.gov/content/hubble-space-telescope-wide-field-camera-3
Cosmic Origins Spectrograph (COS)  主に点光源用の紫外線分光器
https://www.nasa.gov/content/hubble-space-telescope-cosmic-origins-spectrograph
Space Telescope Imaging Spectrograph (STIS)  広がった天体で威力を発揮する撮像分光装置
https://www.nasa.gov/content/hubble-space-telescope-space-telescope-imaging-spectrograph
Fine Guidance Sensor (FGS)  ポインティングのためのガイド星検出装置だが、星の位置と明るさも精密に測れる
https://www.nasa.gov/content/hubble-space-telescope-fine-guidance-sensors
Near Infrared Camera and Multi-Object Spectrometer (NICMOS)  近赤外撮像分光装置(現在休止中)

SM-1以降HSTは華々しい成果を挙げるようになった。修理ミッションはその後も2002年までに4回行われたが、2003年2月に起きたスペースシャトル「コロンビア」の空中分解事故のため、予定されていた次回の修理ミッションが取り消され、HSTの運用は2008年頃で終了すると想定されていた。しかし研究者のみならず広く社会からの強い要望により、2006年にNASAが方針を転換し、2009年5月に最後の修理ミッションSM-4が行われ、予想された寿命を超えてHSTは安定した運用を継続した。2018年10月に姿勢制御用ジャイロで最後まで動いていた3つのうち一つが停止し、HSTは一時観測をしないセーフモードに入った。しかし、20日後には解決策が功を奏し2019年10月現在HSTは観測を継続している。

HSTの科学成果は枚挙に暇がないが、中でも、宇宙初期の銀河の検出とその理解に道を開いたハッブルディープフィールド(HDF)に始まる多数のサーベイ観測、誕生から死までの星の一生の画像による実証などは、科学者だけでなく一般社会に最も大きな影響を与えた。2006年のNASAの方針転換は、HSTによる素晴らしい宇宙の画像と科学の進歩への貢献がいかに人々の心に刻み込まれたかを如実に示す出来事であった。

観測初期には、通常の公募観測に加えて、重点的に行うキープロジェクトとして以下の三つが選定された。
(1) 宇宙の距離尺度(Extragalactic Distance Scale)
セファイドの観測を従来より遠方の銀河まで伸ばし、宇宙の距離はしごの精度を高めてハッブル定数を決定する。
(2) クェーサーの吸収線サーベイ(QSO Absorption Line)
多数のクェーサーの紫外域の吸収線系を観測して銀河間物質の性質と進化を調べる。
(3) 深い撮像観測(Medium Deep Survey)
他の観測装置が特定の天体を観測している間にその天域を広視野カメラで撮像する。これはいわば観測時間の有効活用である。
宇宙の距離尺度キープロジェクトでは最終的にハッブル定数が目標とした10パーセントの精度でH0 = 72±8 kms-1Mpc-1と求められた。
修理ミッションの記録:
SM-1  :  1993 12/ 2-13 大改修、光学系改修 COSTAR, 観測装置更新 WFPC2
SM-2  :  1997   2/11-21 観測装置更新 NICMOS, STIS
SM-3A:  1999 12/19-27 ジャイロ交換
SM-3B:  2002  3/ 1-12 観測装置更新ACS, NICMOS改修, 太陽電池パネル交換
SM-4 : 2009 5/11-24 2006.10のNASAの方針転換により実現(最後のSM) 観測装置更新 COS, WFC3 修理 STIS, ACS 蓄電池,ジャイロ, コンピュータ等交換
関連ホームページ:
https://www.nasa.gov/mission_pages/hubble/main/index.html
http://hubblesite.org/
https://www.nasa.gov/content/goddard/hubble-space-telescope-science-instruments
https://www.nasa.gov/mission_pages/hubble/servicing/index.html


ハッブル宇宙望遠鏡の画像100選(@V101SPACE)

https://www.youtube.com/embed/0V08M1NcdJQ?si=zSpKuqSp_u9UuV6e"

2024年08月14日更新

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    関連画像

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    ハッブル宇宙望遠鏡を搭載したスペースシャトル「ディスカバリー」の打ち上げ
    (クレジット:宇宙望遠鏡科学研究所)
    https://www.spacetelescope.org/images/hst_launch_hi/
    ハッブル宇宙望遠鏡(HST)
    http://www.nasa.gov/images/content/207701main_hst_sm21997_HI.jpg
    第1回の修理ミッション(SM-1)の様子
    https://en.wikipedia.org/wiki/STS-61
    ハッブルディープフィールド(HDF)の成功を受けて新たに観測が行われたハッブル・ウルトラディープフィールド(HUDF)
    (クレジット:NASA, ESA, and B. Mobasher(STScI/ESA))
    https://hubblesite.org/uploads/image_file/image_attachment/12212/print.jpg
    星の誕生現場(カリーナ星雲)。原始惑星系円盤から垂直方向に噴き出すジェット(ハービッグ-ハロー天体)が見える。
    (クレジット: NASA)
    https://asd.gsfc.nasa.gov/archive/hubble/hubble20th_lg.jpg

    美しいキャッツ・アイ星雲(Cat's Eye Nebula)。星の進化の最終段階の姿である惑星状星雲である。
    (クレジット: NASA, ESA, HEIC, and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA))
    https://www.nasa.gov/multimedia/imagegallery/image_feature_211.html