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大型双眼望遠鏡

 

よみ方

おおがたそうがんぼうえんきょう

英 語

Large Binocular Telescope(LBT)

説 明

アメリカ、イタリア、ドイツの国際協力事業で設立された大型双眼望遠鏡会社(Large Binocular Telescope Corporation: LBTC)が、アリゾナ州グラハム山(3200 m)に建設した2つの8.4 m望遠鏡を組み合わせた大型望遠鏡。LBT天文台本部はアリゾナ州ツーソンにあるアリゾナ大学の構内にある。2005年に単体の望遠鏡がファーストライトを実現し、2008年に双眼でのファーストライトに成功した。2025年現在のLBTCの加盟機関は、アリゾナ州の3大学、イタリアの国立天体物理研究所(INAF)、ドイツの5研究所、オハイオ州の4大学の計13機関である。

LBTは、口径8.4 mの主鏡を有する全く同じ望遠鏡2台を1つの経緯台に並べて載せて、口径11.8 m相当の集光力を有する望遠鏡とするものである。主鏡の口径比はF/1.14と極めて明るいので鏡筒が短く、望遠鏡全体と建屋が極めてコンパクトになっている。双眼鏡形式にして、2台の望遠鏡を干渉計とするところに設計のユニークさがある。二枚の主鏡は中心間が14.4 m離れており、主鏡の端まで含めると干渉計としての基線は22.8 mとなる。

LBTは多数の焦点で観測出来る。各鏡筒先端の主焦点2ヵ所、副鏡を用いる2ヵ所のグレゴリー焦点(各主鏡の裏)、平面の第3副鏡を利用する複数のベントグレゴリー焦点(主鏡のすぐ上で望遠鏡構造の中央)がある。副鏡や観測装置のいくつかは6本の可動アームを利用して短時間で交換できる。補償光学機能を有する副鏡と干渉計を組み合わせた大型双眼望遠鏡干渉計(LBT Interferometer: LBTI)は、赤外線領域での高解像度、低熱雑音、高感度を実現する基幹装置である。観測装置としては、主焦点の広視野大型双眼カメラ(The Large Binocular Cameras : LBC)、多天体分光器(MODS1/2)、赤外線の分光器/カメラ(LUCI 1/2)、大型項分散分光器(PEPSI)、中間赤外線カメラ(NOMIC)、コロナグラフ付き赤外線カメラ(LMIRcam)などがある。

ホームページなど
https://www.lbto.org/
https://www.lbto.org/instruments-overview/
https://nexsci.caltech.edu/missions/LBTI/

2025年04月23日更新

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    関連画像

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    アリゾナ州グラハム山の大型双眼望遠鏡
    https://www.lbto.org/
    大型双眼望遠鏡の全体像。主鏡裏のグレゴリー焦点は見えないが、主焦点と可動アーム、ベントグレゴリー焦点の観測装置用プラとフォームが見える。
    https://www.lbto.org/wp-content/uploads/2023/06/Brochure_LBTO_2017_1_web.pdf
    大型双眼望遠鏡干渉計(LBTI)の説明図。(a) LBTのスケール。(b) 補償光学機能を持つグレゴリー副鏡。(c) 干渉計の光線図。(d) 干渉計の本体。以下のプレゼン資料を抜粋して制作した。(岡村定矩)
    Ertel, Steve 2020, 'Thermal infrared imaging with LBTI's LMIRCAM and NOMIC'
    https://zenodo.org/records/4249895

    NGC 1068の中心部を、LBTIと中間赤外線カメラNOMICに中心波長8.7 μmのフィルターをつけて撮像した画像(右)とそれを解説する模式図(左)。右画像の空間分解能は46.8×90 mas(3.3×6.3 pc)を達成している。
    Isbell, J. W. et al. 2025, Nature Astronomy, Volume 9, pp. 417-427;
    この画像は https://arxiv.org/abs/2502.01840  より