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族(小惑星の)

 

よみ方

ぞく(しょうわくせいの)

英 語

asteroid family

説 明

小惑星のなかにはよく似た軌道要素をもつグループがあり、これを族という。このような特徴は1918年に平山清次によって見出されたため、小惑星の族のことを平山族と呼ぶこともある。同じ族に属する小惑星は、共通の母天体の衝突破壊によって形成された破片群であると考えられている。平山は最初にテミス族、コロニス族、エオス族の3つ、後にフローラ族、マリア族を発見した。現在では観測データをもとにコンピュータを使った族の同定が行われ、数十の族が知られている。この中には大きな族の中でさらに族を形成している場合があり、コロニス族の中のカリン族がこの例である。カリン族については族を構成する小惑星の軌道要素変化を現在から逆に数値計算することにより、約600万年前にそれらがほぼ一致することが示された。このことよりコロニス族の中でカリン族を形成した衝突破壊現象がその頃に起きたと考えられている。このように小惑星の族は、小惑星の起源と進化を考えるうえで重要な手がかりを与えてくれる。最近では、反射スペクトルのタイプが似ていることも、族のメンバーとして判定する材料になっている。

2019年07月03日更新

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    *小惑星の軌道長半径と軌道傾斜角の分布。菱形は主な族の位置を示している。
    長谷川直「小惑星」、シリーズ現代の天文学第9巻、渡部・井田・佐々木編『太陽系と惑星』 5.1節 図5.2 (日本評論社)

    *小惑星の軌道長半径と離心率の分布。菱形は主な族の位置を示している。
    長谷川直「小惑星」、シリーズ現代の天文学第9巻、渡部・井田・佐々木編『太陽系と惑星』 5.1節 図5.3 (日本評論社)