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潮汐摩擦

 

よみ方

ちょうせきまさつ

英 語

tidal friction

説 明

潮汐作用により天体が変形することに伴う摩擦現象のこと。たとえば地球の場合には、太陽の潮汐作用で海水が移動して変形する(海洋潮汐という)が、この際に生じる海水と海底(固体地球)の間の摩擦が顕著である。程度に差はあるが、海水に限らず、地殻や大気でも潮汐摩擦は発生する。地球に及ぼす潮汐力は太陽よりも月の方が大きい。潮汐摩擦がなく、海水が瞬時に移動できれば、月の真下(およびその真裏)の地点で海面が最高(満潮)になる。
月による地球の潮汐変形は、月が移動していることと、地球表面が不均質な海陸分布を持つことのために、複雑な時間変動をし、緯度・経度によっても異なる複雑な空間分布を持つ。時間変動の基本成分は、半日周期と一日周期の二つであるが、月の軌道が円軌道でなく楕円軌道であること、月の軌道が地球の赤道面と傾いていることなどからさまざまな周期と振幅のものがある。この潮汐変形を記述するために潮汐モデルの研究が進んでいる。
1990年代になって人工衛星に搭載された海面高度計によって、全球での海面の変動が実測されるようになり、潮汐モデルはより高精度に海面変動を記述できるようになった。この新しい潮汐モデルによると、海面高度が最も高くなる場所(いわゆる満潮の場所)は、月の位置の直下から約3度自転の向きに進んだ方向とその真裏(180度反対側)となる。地球の中心と月の中心を結ぶ線に対して約3度傾いたわずかに楕円形の地球(海洋が両側で満潮となっているため)に働く月の引力は偶力となって、地球の自転を遅くするように働く。
このため地球史的な長時間スケールでは地球の自転は遅くなっており、現在では1日の長さは100年あたり約0.002秒のペースで長くなっている(ただし、100年程度以下の短い時間スケールで見れば地球の自転はさまざまな要素に影響されて複雑に変化する;うるう秒を参照)。地球と月を合わせた系の角運動量は一定に保たれるので、地球の自転が遅くなることの補償として月は毎年約3.8 cmの速度で地球から遠ざかっている。

2022年07月16日更新

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    * 潮汐摩擦が地球の自転にブレーキをかける仕組み(月の公転面に垂直な方向から見た図)。潮汐力(白矢印)は地球のそれぞれの場所での月による重力(黒矢印)から、地球の重心に働く重力(二つの黒矢印の平均)を差し引いたもの。太陽の影響は無視し、海水の形状と角度は誇張してある。
    浜野洋三「自然災害と地球の仕組」、シリーズ現代の天文学 第1巻、岡村・池内・海部・佐藤・永原編『人類の住む宇宙』第2版 6.3節 図6.25(日本評論社)