赤方偏移
よみ方
せきほうへんい
英 語
redshift
説 明
一般に天体の発する光の波長が伸びて観測されることを、赤い側にずれるという意味で赤方偏移という。赤方偏移が起きる原因は三種類あり、それぞれ異なる名前で呼ばれている。
第1は、相手の天体が相対的に観測者から遠ざかっている場合である。このときの赤方偏移はドップラー効果で説明され、これを運動学的赤方偏移と呼ぶ(図1参照)。
第2は、重力ポテンシャルに起因するものである。重力ポテンシャルがより深い場所から発せられた光は、観測者に到達するまでに波長が伸びる。これは一般相対性理論の効果で重力赤方偏移と呼ばれ、エネルギー保存則からも理解できる。
第3は、宇宙膨張の効果によるものである。十分遠方の天体はすべて赤方偏移を示すが、これを宇宙論的赤方偏移と呼ぶ。これは定性的にドップラー効果として説明することが多いが、厳密にはそうではない。天体を発した光がわれわれ観測者に届く間に、宇宙空間が膨張したために光の波長が伸びたのである(図2)。
宇宙論においては、赤方偏移とは現象を指すよりも、そのズレの大きさを表す赤方偏移パラメータ $z$ の意味で用いられることがほとんどである。このパラメータは、実験室系での静止波長 $\lambda_0$ のスペクトル線の波長が $\lambda_{obs}$ として観測された場合、その伸び $\Delta\lambda$ と静止波長 $\lambda_0$ の比で定義される(図3)。赤方偏移パラメータ $z$ は、天体の距離を測る物差しであると同時に、宇宙史の中での時刻(ルックバックタイムや宇宙年齢)を測る物差しでもある(図4参照)。青方偏移も参照。
赤方偏移と宇宙年齢、ルックバックタイム、距離の対応は、本辞典の「有用な諸データの表」
https://astro-dic.jp/about/table/ の中の
「赤方偏移と宇宙年齢および距離」
https://astro-dic.jp/redshift-age-distance/
にある。
2023年04月19日更新
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