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ディザリング

 

よみ方

でぃざりんぐ

英 語

dithering

説 明

撮像観測において少しずつ撮像視野(写野)を変えながら撮像するテクニック。主に2つの目的に利用される。
一つは検出器の感度むらや光学系のけられを補正するフラット補正のための補正データ(フラットフィールド)を取得するためである。目的とする天体のサイズより大きく視野を動かしつつ、複数枚の画像を得れば、ある画像において天体が写っていた場所に、別の画像では天体のない空(スカイ)が写っているようにすることができる。このような複数枚の画像を合成すると、画像中の各画素において、天体像を避けてスカイのみを残すことができる。スカイは一般に撮像視野内で一様と考えられるので、この合成画素をフラットフィールドとすることができるのである。
もう一つは、欠陥のある画素や宇宙線粒子の影響を受けた画像などがある場合に、検出器中の各画素の感度を平均化して、異常な感度を示す画素の影響を避けるために用いる。また分光観測においても、スリット上で天体像を動かしながら複数のデータを得ることで、夜天光による輝線の差し引きの精度を上げることができる。夜光輝線の影響が非常に大きい近赤外線の分光観測では、スリット上でのディザリングはよく用いられる手法である。

2022年07月02日更新

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    ディザリングの概念図。撮像視野をずらしながら複数枚の画像を得る。
    観測視野をすこしずつずらして検出器上の異なる場所で天体を写す観測法 
    岩室史英(http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/~iwamuro/LECTURE/OBS/reduction.html)