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蒸着

 

よみ方

じょうちゃく

英 語

deposition

説 明

金属や酸化物などを蒸発させて、対象素材の表面に付着させて薄膜を形成する方法のこと。真空中で膜物質を飛ばし素材に物理的に付着させる物理気相成長法(PVD; Physical Vapor Deposition)と、膜物質を含むガスの化学的作用を用いて素材表面に膜を成長させる化学気相成長法(CVD; Chemical Vapor Deposition)に大別される。CVDはICなどの製造過程で用いられる。反射鏡など金属膜の蒸着には主にPVDが用いられる。天体観測で用いる反射鏡は、ガラス材にPVDにより金属膜を蒸着したものが一般的である。PVDはさらに真空蒸着とスパッタリングに分けられるが、天体望遠鏡主鏡などの大型鏡の膜形成に用いられるのは真空蒸着である。
真空蒸着は、高真空(約10^{-4}\,{\rm Pa})にした容器の中に素材を設置し、膜材を蒸発させ、素材表面に衝突させることで反射膜を形成する。高真空にするのは、膜材を空気分子などと衝突させずに直進させるためと、沸点を下げて膜材の蒸発を容易にするためである。蒸発させる膜材の量や蒸発時間などを調節することで、形成する膜厚の微妙なコントロールをすることができる。また、蒸発した膜材は真空中を直進するので、膜材の蒸発装置と素材表面の配置を工夫すれば、素材全体にわたって均質な厚みの膜を形成することができる。
光赤外観測用の天体望遠鏡主鏡では、研磨したガラス材表面に100 nm程度の厚みの金属を蒸着する。赤外線用の鏡の場合には、膜厚を数100 nmまで厚くして赤外線の膜透過を防ぐ。反射膜をあまり厚くしないのは、形成膜の不均一性によって光学性能が下がるのを避けるためである。膜材としてよく用いられるのはアルミニウム、銀、金であるが、このうち、取り扱いが簡便で可視光から赤外線まで幅広い波長域で良好な反射率を有するアルミニウムが一般的である。銀は特に可視光においてアルミニウムよりも高い反射率を有するが、酸化に弱く、表面の酸化防止膜がなければすぐに劣化してしまう難点がある。金は600 nmより短い波長域では反射率が悪いが、赤外線領域においては98%以上の反射率を有し、化学的には極めて安定なので、赤外線用途に広く用いられている。ただし、金はやわらかく傷つきやすいため、保護膜をつけることも多い。反射望遠鏡も参照。

2018年10月03日更新

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