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ボイド

高

よみ方

ぼいど

英 語

void

説 明

宇宙の中で、30-50 Mpc(1-1.5億光年)程度のスケールにわたって銀河がほとんど存在しない巨大な空間のこと。アメリカのカーシュナー(R. Kirshner)らによって、うしかい座の方向に初めて発見された。彼らはうしかい座の3ヶ所にある小天域で銀河の赤方偏移サーベイを行っているうちに、ある赤方偏移の区間に銀河が全くないことを1981年に発見した。その後、観測天域を増やして広い範囲を密に覆う赤方偏移サーベイを行って、1987年にボイドの存在を確認した。このボイドは直径約100メガパーセク(100 Mpc=3億光年)にも達していた。その後スローンデジタルスカイサーベイなどの銀河サーベイによって、ボイドは超銀河団と同程度に普遍的な存在であり、フィラメント状構造とともに、宇宙の大規模構造を構成する基本要素であることがわかった。

2023年12月23日更新

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    図1 ボイドの兆候を初めて捉えたカーシュナーらによる赤方偏移サーベイの結果。縦軸は銀河の個数で、横軸は赤方偏移から求められた後退速度(単位は1000 km/s)。11000-18000 km/sの間に銀河がほとんどないことは分かる。探査した三つの天域は図2で大きな四角印で示されている。
    Kirshner et al. 1981, Ap.J., 248, L57 より転載。

    図2 最初に発見されたうしかい座のボイドの探査領域(黒丸)。1981年に四角で示す三つの天域の赤方偏移サーベイから、ボイドを示唆する図1の結果を得たので、その後サーベイ天域を黒丸で示すように密に配置してサーベイを行った。
    Kirshner et al. 1987 ApJ, 314, 493 より転載。
    (上)図2の探査領域の赤経方向を押しつぶしたウエッジダイアグラム。(下)立体視のための図で、上の図の円形の部分にはほとんど銀河のないことが立体視からわかる。Kirshner et al. 1987 ApJ, 314, 493
    宇宙の大規模構造。フィラメント状構造に囲まれたボイドがあちこちに見える。
    http://www.sdss3.org/images/gallery/sdss_pie2.jpg