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天王星

小

よみ方

てんのうせい

英 語

Uranus

説 明

木星土星海王星とともに巨大ガス惑星の一つである。軌道長半径は約19天文単位(au)、質量は地球質量の約15倍、自転周期は約17時間、平均密度は約1270 kg m-3である。天王星は自転軸が軌道面に対して98度傾いており、ほぼ横倒しの状態で公転している。

大部分が水、アンモニア、メタンの氷からできており、中心には岩石からなる小さなコアがあると考えられている。外層は水素とヘリウムを主成分とする大気であるが、これらが主成分である木星土星とは異なり、天王星では大気は少ない。このため木星や土星とは区別して、天王星およびそれと似た構造を持つ海王星の2つを巨大氷惑星と呼ぶことも多い。他の巨大惑星とは異なり、天王星には目立つ大気模様はほとんど存在しない。天王星の磁場は天王星の中心からずれ、その方向も自転軸から約60度ずれている。

木星のような巨大ガス惑星は、十分大きくなった氷原始惑星が、周りの原始太陽系円盤ガスを捕獲して形成される(太陽系形成論)。しかし天王星や海王星の領域では太陽から遠く材料物質が少なかった上、公転周期が長いこともあって集積に時間がかかり、十分なガス捕獲が起きる前に星雲ガスが消失してしまった。このため氷を主成分とする惑星になったと考えられる。天王星、海王星は現在よりも太陽に近い場所で形成後、現在の位置に移動したと考えられている(ニースモデル)。

天王星の自転軸が横倒しとなっている原因については、形成後に巨大天体の衝突を受けたという説があるが、詳しいことは明らかではない。
天王星には5つの比較的大きな衛星を含めて、2022年8月末時点で27個の衛星が確認されている(すべてに国際天文学連合IAUによって登録番号がつけられている)。これらの組成は氷と岩石が混じったものであると考えられている。また細い環が複数見つかっているが、これらは天王星による恒星の掩蔽現象の観測の際に、期せずして発見されたものである。その後、ボイジャー探査機が詳しい観測を行い、環の一つでは、その細い形状を維持していると思われる、羊飼い衛星も確認された。1986年にボイジャー2号が天王星をフライバイして以降、探査機による天王星探査は行われていない。今後、新たな探査が期待される天体である。

2023年06月19日更新

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    関連画像

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    2003年8月にハッブル宇宙望遠鏡が撮影した天王星(NASA)
    https://www.jpl.nasa.gov/images/voyager/20161021/UranusHST20161021-16.jpg
    1986年に探査機ボイジャー2号が撮影した天王星(NASA)
    近赤外線で見た天王星の環と衛星(すばる望遠鏡、NAOJ)