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望遠鏡

小

よみ方

ぼうえんきょう

英 語

telescope

説 明

遠方にある物体を拡大して観察する装置のこと。あるいは、遠方にある物体からのさまざまな放射を集め高感度でとらえる装置のこと。もともとはその言葉のとおり、遠方物体を可視光で拡大観察するための装置のことを指していたが、今日では、遠方天体の放つ、電波からガンマ線に至るあらゆる波長域の電磁波を集光してとらえる装置を広く望遠鏡と呼ぶ。ニュートリノなどの粒子線、重力波をとらえる装置のことも望遠鏡と呼ぶことがある。
地上物体の観察に用いられるものを地上望遠鏡、天体・宇宙の観測に用いられるものを天体望遠鏡というが、天文学の分野では地上望遠鏡と言えば「地上に置かれた天体望遠鏡」を指す。これに対して宇宙空間(スペース)から天体を観測する望遠鏡は宇宙望遠鏡と呼ぶ。大気の窓を透過する電磁波のみが地上から観測できるので、地上望遠鏡のほとんどは可視光・赤外線望遠鏡と電波望遠鏡である。可視光望遠鏡は一般に光学望遠鏡と呼ばれる。このほかに高エネルギーの宇宙線とそれに伴う現象を観測する地上望遠鏡もある。
最も歴史の古い地上望遠鏡は光学望遠鏡で、レンズを集光素子として用いる屈折望遠鏡であった。しかし大きなレンズの製作は技術的に困難で、大口径望遠鏡は反射望遠鏡となってきた。望遠鏡は天球上の任意の天体に向けることができ、かつ一旦目的天体を視野に捉えたらその日周運動を精密に追尾する必要がある。このために地上望遠鏡にはさまざまな架台の形式が考案されている。
反射望遠鏡は現代の天体望遠鏡の主流であり、X線から紫外線可視光赤外線、電波まで広い波長域の電磁波の観測に用いられている。物質への透過力の強い硬X線やガンマ線では、反射鏡を集光素子として用いることができず、広い面積の検出器に光子の到来方向がわかる装置をつけて望遠鏡としている。
望遠鏡は1608年に発明された。オランダのミデルブルフという町の眼鏡職人達が眼鏡用のレンズを組み合わせているうちに偶然に遠方の物体が拡大されることを発見した。当時ミデルブルグには、ベネチアガラスの流れを汲む職人のいるガラス工場で高品質のガラスが製造され、眼鏡生産が盛んであった。望遠鏡の発明者は、その技術を最初に特許申請したハンス・リッパヘイ(Hans Lipperhey)とされているが、ほとんど同時期に他の眼鏡職人の中にも同様な技術を知った者がいた。ガリレオがイタリアのパドバで、自作の望遠鏡で夜空を観測したのはその僅か1年後であるから、望遠鏡のニュースはヨーロッパに驚くほど早く広まったことが分かる。ガリレオ式望遠鏡ケプラー式望遠鏡も参照。

2021年10月07日更新

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