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超光速運動

 

よみ方

ちょうこうそくうんどう

英 語

superluminal motion

説 明

みかけ上、光速度を超えた速度で運動しているように見える現象。ある天体が、光速度に近い速度でわれわれの視線に対して斜め方向に近づきながら、電磁波を放射している場合、視線に垂直な天球面上で、その物体があたかも光速を超えて運動するように見えることがある(天体が視線に垂直方向に移動した距離を、その両点から電磁波がわれわれに到達した時間の差で割ると、光速を超える場合がある)。たとえば銀河中心核からのジェットで高速に放出されるガスの塊を電波で観測した場合などに、このようなみかけ現象が起こる。実際に物質が光速を超えて運動しているわけではない。超光速運動をする天体の見かけの速度は以下のようにして導くことが出来る。

時刻0に銀河中心核からジェットと光子1が、時刻 $t$ にジェットから光子2が出た場合、光子1と光子2が観測者に届くときの時間の差は

$$\Delta t = (\ell_1-\ell_2)/c = (1-v/c\cdot\cos\theta)t$$

となる(図1参照)。このとき、時間 $t$ の間にジェットは見かけ上 $\Delta x = vt\sin\theta$ だけ動くから、ジェットの見かけの速度 $v_{app}$

$$v_{app} = \Delta x / \Delta t = v\cdot\sin\theta/(1-(v/c)\cdot\cos\theta)$$

で与えられる。
光速度不変の原理も参照。

2023年05月10日更新

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    図1-超光速運動の原理。本文参照。天文学辞典オリジナル。
    図2-ジェットが観測者の視線方向から20度(θ=20 degree)傾いて運動しているとすると、この図の青線のように、見かけの速度が光速の50%、100%、500%だった場合、実際にジェットは光速の62%(赤線)、78%(緑線)、99%(橙線)という非常に速い速度で運動していることになる。(クレジット:国立天文台水沢、日韓合同電波望遠鏡群で探る巨大ブラックホールジェット 〜見えてきた「超光速噴出流」の現場〜HPより)。http://www.miz.nao.ac.jp/content/pr/pr20160312/c07