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s過程

 

よみ方

えすかてい

英 語

s-process

説 明

遅い(slow)中性子捕獲とそれに続くベータ崩壊によって鉄族より重い元素をつくる過程。sプロセスと呼ばれることも多い。核図表で安定線上の原子核が形成される。中性子捕獲が速い(rapid)r過程とは核図表の上で異なった経路を取る。

s過程は、漸近巨星分枝星(AGB星)や超新星など中性子が豊富に存在する場所でおこる。AGB星で生成されたs過程元素は、ヘリウム殻フラッシュによる汲み上げにより外層へと運ばれ、星間物質へと還元される。s過程で捕獲される中性子は 13C(α, N)16O などの反応により供給される。 中性子捕獲元素も参照。

2023年04月18日更新

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    *核図表上におけるs過程とr過程の経路(それぞれジグザグの実線)。r過程については模式的なもの。小さな黒丸は安定核種を示す。原子核を構成する中性子の魔法数N=126に対応して、s過程とr過程によって創られる存在量がそれぞれピークとなる2つの安定核種の位置が示されている(破線もしくは矢印の延長線が示す安定核)。魔法数N=50、82についても同様に、ピークが2つずつ存在する。
    望月優子・佐藤勝彦「元素の起源」、シリーズ現代の天文学第1巻、岡村・池内・海部・佐藤・永原編『人類の住む宇宙』第2版3章 図3.20(日本評論社)[原図:Rolfs & Rodney,“Cauldrons in the Cosmos”, Univ. Chicago Press (1988), p.472; Seeger, Fowler & Clayton, Astrophys. J., Suppl., 11, 121 (1965)] を改変。