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真空の相転移

高

よみ方

しんくうのそうてんい

英 語

phase transition of vacuum

説 明

まず、素粒子物理学における真空とは、エネルギー零の状態というよりは、物質場の励起していない基底状態、という意味である。したがって、何らかの原因によって真空の基底状態自体が変化することが真空の相転移である。
その最も典型的な例は、右図のようなヒッグス場の相転移である。これはヒッグス場のポテンシャルを簡単のため1成分だけ描いたものであるが、初期宇宙の高温かつ高密度時には、有限温度効果により、図の(a)のような形を持つ。これは、熱浴からエネルギーが供給されるため、取り得る状態数の多い、対称性の回復した、\phi=0の状態の方が好まれるようになるためである。したがって、\phi=0が基底状態になる。
温度が低下すると有限温度補正はなくなり、ポテンシャルは図の(b)のようになる。このときエネルギーが最小になる基底状態は\phi=\pm vの2通りの値をとり、いずれかの状態が実現する。この変化が真空の相転移である。ヒッグス場が期待値を持つと、それと結合しているゲージ場や物質場が質量を持つことになるので、この相転移前はゲージ場は質量ゼロで相互作用の統一がなされた状態が実現し、相転移後は相互作用の分化した状態になる。また、\phi=0の状態では、ポテンシャルエネルギー密度はかさ上げされているので、温度が低下しても暫くこの状態が保たれると、インフレーション的膨張を起こすことが可能となる。
自発的対称性の破れインフレーション理論も参照。

2018年09月17日更新

関連画像

真空の相転移のグラフ
* 真空の相転移の説明図
岡村・家・犬塚・小山・千葉・富阪編『天文学辞典』、シリーズ現代の天文学別巻(日本評論社)p. 191