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パターン速度

 

よみ方

ぱたーんそくど

英 語

pattern speed

説 明

物体が示す様相が一定の分布を保ったまま移動する場合の移動速度。特にその物体自体の移動速度と異なる場合にパターン速度という。日常的に見かける例としては、電光ニュースの文字の移動速度が挙げられる。
密度波理論によると渦巻銀河渦巻腕は、恒星の粗密波として生じているものであり、その移動速度と内部の天体(星やガス)の運動速度とは一致している必要がない。このとき、粗密波の波としての伝播速度をパターン速度と呼ぶ。銀河の場合、パターンが回転するのに要する時間が著しく長いため、回転する様子を直接得ることは極めて困難である。このため、何らかの方法で天体の運動とパターン速度とに関連を付けることで間接的にパターン速度を求めるのが普通である。共回転(パターン速度と天体の速度が同じになること)だと考えられる場所を観測的特徴から見つけ、そこにある天体の回転速度をもって、その銀河全体のパターン速度とするという方法などがよく用いられている。星形成率が半径方向に急減する場所や円盤部の恒星密度が急減するところ、棒状バルジの端などが共回転の場所に該当すると考える研究例があるが、具体的にどんな特徴が共回転に対応するかについてには異論も多い。なお、銀河のように、円運動の場合には、パターン回転速度ということもある。リンドブラッド共鳴も参照。

2020年01月06日更新

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    電球の明滅によるパターン速度の動画
    パターン速度と物体の速度が一致しない例。一列に並んだ電球が1つずつ順に明滅する場合、明暗パターン(明るい点の位置)に注目すると、それが移動しているといえる。その移動速度は明滅の時間変化と電球の間隔で決まり、電球の移動速度(この場合だと、0)とは異なる値となる。(画像作成:半田利弘)