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メーザー

 

よみ方

めーざー

英 語

maser

説 明

誘導放射によるマイクロ波増幅(Microwave Amplification by Stimulated Emission of Radiation)の英語の頭文字から作られた略語。語源から明らかなように、主として電波マイクロ波領域で放射するものをいうが、物理現象としてはレーザーと全く同じである。一般に、物質は誘導放射という特性を持つが、反転分布が実現すると、きっかけとなる電磁放射が指数関数的に強くなる現象が発生する。これがメーザーである。地上では、反転分布になっている物質を合わせ鏡ではさんだ構造を作り、そこで電磁波を何度も往復させて強力なメーザーやレーザーを発生させるが、天体現象では、反転分布となっている物質が極めて長い距離に渡って続いている場合があり、そこを電磁波が通過する際に、順次、誘導放射によって電磁波が増幅されることで観測可能なメーザーが生じる。星間空間では水H2Oや水酸基ラジカルOH、メタノールCH3OH、一酸化ケイ素SiOなどの分子が示すメーザーが観測されている。

2018年09月16日更新

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    メーザー
    *2つのエネルギー準位の粒子の数。(a)は熱平衡状態の場合、(b)はメーザーを起こす反転分布の場合である。nは粒子数で、gは統計的重率である。
    大西利和「分子スペクトルの励起機構」、シリーズ現代の天文学第6巻、福井・犬塚・大西・中井・舞原・水野編『星間物質と星形成』3.4節 図3.7(日本評論社)