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マグマオーシャン仮説

高

よみ方

まぐまおーしゃんかせつ

英 語

magma ocean hypothesis

説 明

地球型惑星は集積段階で、微惑星集積により解放される重力エネルギーを原始大気の保温効果などにより取り込むことで、溶融状態にある。これをマグマオーシャンと呼ぶ。その中で、金属質物質は中心に沈み中心核を形成し、その際に解放される重力エネルギーは天体を溶融状態に保つのに使われる。やがて天体集積速度が遅くなると、マグマオーシャンは冷却を始め、その段階でマントル内部の成層構造や原始地殻が形成される。
アポロ計画からもたらされた多様な岩石の分析から、斜長岩地殻の下にカンラン石と輝石を主成分とする下部地殻とマントルが存在するという月の内部構造が提案され、マグマオーシャン仮説はこれを説明するために考案された。厚い斜長岩地殻をつくるためにはAl, Caを効率よく集めなければならない。
月が表層から数100km以上溶融して深いマグマオーシャンが形成されたと考える。冷却にともない結晶が析出する。最初に凝固点が高く密度が大きいカンラン石と輝石がマグマオーシャンの底に沈む。これらの鉱物はAl, Caを取り込まない。マグマ中のAl, Ca濃度が十分に高くなると密度の小さい斜長石が析出して浮上し、斜長岩地殻を形成する。最後に固化したマグマにはイオン半径の大きい希土類元素などが濃集して、KREEP岩(カリウム、希土類元素、リンなどの濃度が高いためK-REE-Pと名付けられた)のもとになる層を作る。
質量の小さな月では微惑星集積の重力エネルギーは小さいため、マグマオーシャンを形成する熱源が問題であったが、巨大衝突説による月形成モデルでは、溶融状態から月が生まれたことは必然となっている。
火星よりも大きな地球型惑星では、マグマオーシャンの維持に原始大気の保温効果が重要な役割を果たしたと考えられている。

2018年03月12日更新

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