天文学辞典 | 天文用語をわかりやすく解説

線幅拡大

 

よみ方

せんはばかくだい

英 語

line broadening

説 明

吸収を起こすガス粒子の熱運動や周囲の粒子による擾乱でスペクトル線の幅が拡大すること。スペクトル線はガス粒子(原子や分子)の離散的なエネルギー準位間の遷移に起因する。しかし粒子のランダムな熱運動は、ドップラー効果によりスペクトル線の波長(あるいは振動数)に幅を生じさせる。これはマクスウェル-ボルツマン分布(温度に応じたガウス分布(正規分布))で記述される。一方、ある励起状態を粒子が保つ時間が有限であることに起因するエネルギー準位の広がりによって、スペクトル線に幅が生じる(自然幅)。また、周りの粒子との衝突によってもエネルギー準位が影響を受け、スペクトル線に幅が生じる(圧力幅).これらは減衰輪郭としてローレンツ関数(分散関数)で表され、線中心から離れたところでは逆2乗で減少する。一般に線中心付近ではドップラー効果に起因する広がりが卓越し、線中心から離れると減衰の効果が現れる。両者がたたみ込みで合わさったものが最終的な線輪郭となり、フォークト輪郭と呼ばれる。観測されるスペクトル線はさらに、天体の回転運動やマクロな乱流運動により線幅が広がる影響を受けている。

2018年09月16日更新

関連画像

*スペクトル線輪郭を表すヒェルティング関数
竹田洋一「恒星の大気とスペクトル」、シリーズ現代の天文学第7巻、野本・定金・佐藤編『恒星』2章 図2.6(日本評論社)