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惑星間空間擾乱

 

よみ方

わくせいかんくうかんじょうらん

英 語

interplanetary disturbance

説 明

太陽フレアコロナ質量放出(CME)が発生する際に惑星間空間中に生じる擾乱。この擾乱は太陽コロナから放出されたプラズマ塊であるCMEが惑星間空間内を高速で移動していくもので、惑星間を伝播する過程で太陽風と相互作用して衝撃波を形成する。このため、ICME(interplanetary CME)とも呼ばれる。ICME中のプラズマ塊と、その前方に形成される衝撃波とで挟まれた領域は、圧縮されて高温高密度になっている。このプラズマ塊中では、ヘリウムの比率が通常の太陽風よりも高い。また、プラズマ塊の磁場はフォースフリー磁場状態となっており、らせん状の磁気ループ形状をしている。太陽近傍で観測されるCMEの放出速度は30-3000 km s-1と広い範囲にわたっているのに対し、地球の公転軌道半径である1天文単位の距離でICMEの速度は300-800 km s-1と周囲の太陽風の速度範囲に入っていることから、ICMEはその伝播過程で太陽風と相互作用して加速減速されていると考えられている。

2018年09月16日更新

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    *地球軌道で観測される衝撃波の構造
    小島正宜「惑星間空間擾乱」、シリーズ現代の天文学第10巻、桜井・小島・小杉・柴田編『太陽』 9.2節 図9.6(日本評論社)
    (原図はMaubashi 1997, AGU Geophys. Monograph, 99, 147)