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はやぶさ2探査機

小

よみ方

はやぶさつーたんさき

英 語

Hayabusa2 Spacecraft

説 明

宇宙航空研究開発機構(JAXA)のはやぶさ探査機の後継機。直径約900 mの小惑星であるリュウグウ(Ryugu)の詳細な観測とサンプルリターンを目的とした。リュウグウは、はやぶさ探査機がサンプルを持ち帰ったイトカワと同じ地球接近小惑星の一つであるが、スペクトル型がC型の炭素質小惑星で、S型の小惑星イトカワと比べるとより始原的な天体で、有機物や含水鉱物をより多く含んでいると考えられている。
はやぶさ2は2014年12月3日にJAXAにより打ち上げられた。イオンエンジンを主な駆動力として、姿勢制御には太陽光の光圧を利用するソーラーセイルモードを併用している。2015年12月3日に地球スイングバイでリュウグウへ向かう軌道に入り、2018年6月27日にリュウグウに到達した。はやぶさ2の主な観測装置としては、科学観測や航法のための写真を撮影する光学航法カメラ(可視-近赤外)、表面温度を調べる中間赤外カメラ(8-12ミクロン)、表面の鉱物を調べる近赤外分光計(1.8-3.2ミクロン)、リュウグウと探査機の間の距離を測定するレーザー高度計(30 m-25 km)がある。
2018年6月27日のリュウグウ到達後、はやぶさ2はリュウグウのそばのホームポジション(リュウグウと地球を結ぶ方向でリュウグウ表面から約20 kmの高さ)に滞在し、ここをベースとして20 km程度の範囲を移動して、さまざまな観測と着陸サンプリング(タッチダウン)を行った。また、MASCOTとミネルバ2という小型着陸機とローバで表面の詳細観測も行った。
2018年9月21日にはミネルバ2をリュウグウに向けて投下した。リュウグウ表面で移動中にミネルバ2が撮影した写真が22日に送られてきて、ミネルバ2が着地に成功したことが確認された。2019年2月22日には、はやぶさ2が最初のタッチダウン(着地)を行い岩石と砂などのサンプルを採取することに成功した。同年4月5日には、はやぶさ2から切り離された衝突装置により、リュウグウ表面に直径約10 mのクレータを作ることに成功した。7月11日にはクレータ内部からサンプルを採取するため、はやぶさ2が2度目のタッチダウンを行い、日本時間午前10時6分頃サンプル採取に成功した。
はやぶさ2は2019年12月にリュウグウを離れて地球帰還の途につき、ほぼ1年後の2020年12月に地球に帰還接近し、12月6日未明、サンプルが入ったカプセルを切り離した。カプセルは日本時間午前2時54分にオーストラリア南部ウーメラ近くの砂漠に着地し、現地チームが無事回収した。京都大学岡山天文台のせいめい望遠鏡で撮影した、はやぶさ2からカプセルが遠ざかって行く動画は以下のサイトで見られる。
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/general/facilities/okayama/seimei_tel/result/hayabusa2/
カプセルを切り離したはやぶさ2は、新たなミッションとして小惑星「1998KY26」の探査に向かった。11年後に到着する見込みである。
はやぶさ2がリュウグウから持ち帰った約5.4グラムの砂や小石は、世界の研究機関に配布され分析が進んでいる。日米の研究チームの分析により、15種類以上のアミノ酸が検出されたことが2022年6月6日に報道された。アメリカNASAのアポロ計画により1969年に初めて月の岩石や砂が、その後旧ソ連のルナ計画でも月の砂が地球に持ち帰られた。今世紀になってからは、スターダスト計画(NASA)により彗星塵が、そして我が国のはやぶさ計画(JAXA)では小惑星「イトカワ」のサンプルが持ち帰られた。スターダストの彗星塵と隕石のいくつかからアミノ酸が見つかっているが、 岩石質の小惑星イトカワや月からはアミノ酸は見つかっていなかった。今回のリュウグウの物質の分析により、小惑星からはじめて生命の源となるアミノ酸の存在が確認されたことになる。
また、NASAが2016年9月に打ち上げたオサイリス・レックス(OSIRIS REx; オシリス・レックスと呼ばれることもある)が小惑星ベヌー(ベンヌと呼ばれることもある)からサンプルを採取した。サンプルを収納したカプセルは2023年9月24日深夜(日本時間)に、アメリカ合衆国ユタ州の砂漠にパラシュートで着地し回収された。。
JAXAのはやぶさ2ホームページ: http://www.hayabusa2.jaxa.jp/


はやぶさ2探査機ミッションの解説動画
クレジット:JAXA宇宙科学研究所

https://youtu.be/KHir75B1Wo4


「はやぶさ2」搭載の小型モニタカメラが撮影した小惑星リュウグウへの第1回目タッチダウンの様子。日本時間2019年2月22日。動画の再生速度は実際の時間の5倍速。
クレジット:JAXA宇宙科学研究所

2023年09月25日更新

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    関連画像

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    東京大学木曽観測所の広視野カメラ「トモエゴゼン」が捕らえたはやぶさ2とカプセルのランデブー光跡。2020年12月5日23時55分から00時08分の観測で得た動画データから作成した画像。カシオペア座の方向で視野は31.7分角 x 17.8分角(上が北)。画面中央上から左下にほぼ45度傾いて走る明るい線がはやぶさ2で、この線と平行で南西方向(右下)に約10分離れたとても微かな線がカプセルの光跡。
    http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/NEWS/hayabusa2_2020/hayabusa2_2020.html
    クレジット 東京大学木曽観測所
    京都大学岡山天文台のせいめい望遠鏡で撮影したはやぶさ2とカプセルの画像。撮影時刻 2020年12月5日 19:47 露出時間 300秒(カプセルの動きに合わせて望遠鏡を動かしている)視野 11'x6'で画像の上が天の北極方向。
    https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/general/facilities/okayama/seimei_tel/result/hayabusa2/
    クレジット:京都大学岡山天文台
    小惑星リュウグウにタッチダウンを行う「はやぶさ2」のイメージ図。
    (クレジット: JAXA)
    http://jda.jaxa.jp/result.php?lang=j&id=fc2e662185324ca7051ff42bf8d2463d
    はやぶさ2探査機の概要(クレジット: JAXA)
    ONC-Tによって距離約20kmから撮影されたリュウグウ。2018年6月30日23:13(日本時間)頃の撮影。(画像クレジット:JAXA, 東京大, 高知大, 立教大, 名古屋大, 千葉工大, 明治大, 会津大, 産総研)
    http://www.hayabusa2.jaxa.jp/topics/20180711je/index.html
    2018年9月22日、11:44(日本時間)頃にRover-1Aが撮影。カラー画像。リュウグウ表面において移動中(ホップ中)に撮影されたもの。左側半分がリュウグウの表面。右側の白い部分は太陽光によるもの。(画像のクレジット:JAXA)
    http://www.hayabusa2.jaxa.jp/topics/20180922/
    タッチダウン直後にタッチダウン地点付近を撮影した画像。 広角の光学航法カメラ(ONC-W1)によって、機上時刻で2019年2月22日07:30頃(日本時間)に撮影された。
    (画像クレジット:JAXA, 東京大, 高知大, 立教大, 名古屋大, 千葉工大, 明治大, 会津大, 産総研)
    http://www.hayabusa2.jaxa.jp/topics/20190225_TD1_W1image/
    2019年7月11日、第2回のタッチダウン時(日本時間10:06:32)に、はやぶさ2の機上カメラONC-W1で撮影された画像。
    (画像のクレジット:JAXA、東京大、高知大、立教大、名古屋大、千葉工大、明治大、会津大、産総研)