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一般相対性理論

高

よみ方

いっぱんそうたいせいりろん

英 語

general theory of relativity

説 明

アインシュタイン(A. Einstein)が特殊相対性理論提唱の10年後、1915年から16年にかけて到達したニュートン(I. Newton)の重力理論にとってかわる重力理論である。ニュートンの理論では重力は遠方まで届く遠隔作用でその伝搬速度は無限大となる。これは明らかに特殊相対性理論と矛盾する。重力の法則を特殊相対性理論と矛盾しないように拡張した理論が一般相対性理論である。
特殊相対性理論では個々の観測者の測る時間の進みと空間尺度は絶対性を失い、ミンコフスキー時空上の座標系の選択にすぎなくなったが、ミンコフスキー時空は絶対的な存在とみなされる。一般相対性理論ではミンコフスキー時空すら絶対性を失い、力学的自由度をもって運動することになる。したがって重力の存在はミンコフスキー時空からのずれとして幾何学的に表される。ミンコフスキー時空からのずれを時空の曲がり(あるいは時空のゆがみ)と表現する。時空の曲がりは4次元では20個の独立な成分をもったリーマンテンソルで表される。リーマンテンソルが重力場の数学的な表現である。物理法則はこの曲がった時空上の任意の座標変換に対して不変な形で表されるという要請(一般相対性原理)から導かれるのが一般相対性理論である。
一般相対性原理を満たす時空の曲がりを規定する方程式がアインシュタイン方程式で、物質のエネルギーと運動量の分布を表すエネルギー運動量テンソルからリッチテンソルを決める式である。リッチテンソルはリーマンテンソル(4次元では20個の独立成分をもつ)から作られるが、独立な成分が4次元では10個であるため、リーマンテンソルのすべての成分を規定することができない。すなわち物質が存在しない状況(真空)でも時空は曲がり、重力場が存在できる。例えば重力波ブラックホールはアインシュタイン方程式の真空解であり、天文学的にも非常に重要な解である。現在までのところ一般相対性理論と矛盾する実験や観測は知られておらず、天文学では一般相対性理論が正しいいとして観測事実を解釈することが行われている。たとえば重力レンズ現象では、レンズにより歪められた像の観測から重力源(レンズ天体)の質量分布を決定したり、重力波の観測から連星系の質量や軌道運動を決定したりする。

2022年07月24日更新

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