天文学辞典 | 天文、宇宙、天体に関する用語を3000語以上収録。専門家がわかりやすく解説します。

角度表示

中

よみ方

かくどひょうじ

英 語

expression of angle

説 明

天文学では角度を精密に測定することがとても重要になる。天球上での天体の見かけの位置は天球座標系で表されるが、その座標は角度である。それに対応して、天球上での天体の見かけの大きさおよび二点間の距離(角距離)も角度で表す。
国際単位系(SI)では角度の単位はラジアンであるが、これは一般社会ではなじみが薄い。社会で広く用いられている角度の単位は「度」、「分」、「秒」であり記号はそれぞれ「°」、「'」、「''」である。時間の単位と混同する恐れのあるときは、「分」は「分角」あるいは「角度分」、「秒」は「秒角」あるいは「角度秒」ということがある(3分角、6秒角、など)。天文学分野でも角度はラジアンではなく12°42'30.6''のように度・分・秒(あるいは12.7085°のように小数点を付けた度で表すことが多い。ただし、見かけの大きさ(角度\theta)と距離(d)から天体の真の大きさ(D)を求める公式D=d\times\theta
における\theta の単位はラジアンでなければならない。
1°は半円周を見込む角度(\piラジアン)の1/180と定義されているので、\piラジアン=180°である(\piは円周率)。「分」と「秒」は時間と同じ60進法に従っている。すなわち、1'は1°の1/60、1''は1'の1/60(1°の1/3600)である。1''より小さい角度は10進法で、0.1''、0.01''等のように表記する。千分の1秒を「ミリ秒」、百万分の1秒を「マイクロ秒」と呼ぶことがある。
赤道座標系では、赤経を角度ではなく時間で表すことが多い。これは天体の観測に便利だからである。この場合の単位は時計と同じく「時(時間)」、「分」、「秒」である。角度との対応は、24時間が360°に対応するので、1時間=15°、1分=15'、1秒=15'' となる。例えばこと座のベガ(織女星)の国際天文準拠系(ICRS)による赤道座標は
赤経 183656.s33635
赤緯 +38° 47' 01.''2802
と表される。
太陽と月の見かけの大きさ(視直径)はともに約30'(0.5°)である。両者の真の直径は約400倍違うが、地球からの距離も約400倍違っているので、見かけの大きさがほぼぴったり同じになる。地球を回る楕円軌道上でが地球から大きく離れた位置で日食が起きると、月の見かけの大きさが太陽の見かけの大きさより僅かに小さくなり、皆既日食は起きずに金環日食が起きる。
最先端の天文学では角度の測定はマイクロ秒(100万分の1秒)の精度を目指している。2019年4月に発表されたイベントホライズンテレスコープによるブラックホールシャドウの周りの明るい光子球の直径は約42マイクロ秒であった。この角度は月面に置いた野球ボールを見込む角度にほぼ等しい。

2019年10月03日更新

関連画像

* 角度表示のイメージ図 (作成 岡村定矩)
日食の原理(国立天文台)
http://naojcamp.nao.ac.jp/phenomena/20120521/about-eclipse.html
おとめ座銀河団にある巨大楕円銀河M87の中心核にあるブラックホールのシャドウ(影)とそれを取り巻く光子球。光子球の直径は約42マイクロ秒である。国立天文台提供の原図に補足説明を記入した(作成 岡村定矩)
原図出典:https://www.nao.ac.jp/news/sp/20190410-eht/images.html