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ドップラー法

高

よみ方

どっぷらーほう

英 語

Doppler spectroscopy

説 明

太陽系外惑星の検出方法の一つ。ドップラー分光法、視線速度法などとも言う。恒星に比べると惑星は非常に軽いが、恒星のまわりを惑星が公転すると、惑星の引力により恒星自体も微小にふらつく(両者は共通重心の周りを公転している)。恒星の微小なふらつき運動を恒星からの光のドップラー偏移を通して検出する方法がドップラー法である。ただし観測できるのはふらつき運動の視線方向成分なので、惑星の軌道面が視線方向に対して傾いている場合は、その効果は小さくなり、軌道傾斜角が0度の場合、速度変化は観測できないことに注意。間接法のひとつである。
たとえば太陽木星の二つだけを考えた場合、木星の公転周期は約12年であるので、太陽のふらつきの速度は振幅13 m s-1で約12年で周期的に変化する。これにより可視光で太陽を太陽系外から観測した場合、スペクトル線には約2×10-14 m の周期的な波長のずれが検出される。ドップラー法では、中心の恒星の質量が既知ならば惑星の質量の下限値が得られる。トランジットを起こす惑星系では、惑星の大きさを推定できるトランジット法(軌道傾斜角がほぼ90度)と組み合わせることで、惑星の質量と体積が推定できるので、惑星の密度が計算でき、ガス惑星か岩石惑星か区別することが可能になる。ドップラー法には、中心の恒星に近い重い惑星ほど検出しやすいというバイアスがある。
1995年にマイヨール(M. Mayor)とケロー(D. Queloz)は、この方法により初めて太陽型恒星まわりの太陽系外惑星をペガスス座51番星の周りに発見した。この業績により二人は2019年度ノーベル物理学賞を受賞した。ガス吸収フィルターヨードセル光周波数コムも参照。


太陽系外惑星と中心星が共通重心の回りを回転する様子(Credit: ESA)
掲載元のサイト https://sci.esa.int/web/exoplanets/-/60655-detection-methods

https://youtu.be/u8EW4oPst_I


ドップラー法の解説動画(Credit: ESO/L. Calçada)
掲載元のサイト https://www.eso.org/public/videos/eso1035g/

https://youtu.be/B-oZYm3L1JE

2021年02月22日更新

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    * ドップラー法の概念図。ドップラー効果による中心星の視線速度の周期変動を観測する。
    ドップラー法の説明図。惑星がAの位置にいるとき、主星もAの位置におり、観測者に少し近づいていて、光が少し青く(波長が短く)なる。また、惑星がA’にいる時は、主星もA’の位置におり、観測者から少し遠ざかっていて、光が赤く(波長が長く)なる。
    http://exoplanet.mtk.nao.ac.jp/instrument/ird
    ドップラー法の説明図
    https://lco.global/spacebook/radial-velocity-method/