天文学辞典 | 天文用語をわかりやすく解説

ドーム(望遠鏡の)

高

よみ方

どーむ(ぼうえんきょうの)

英 語

dome

説 明

 

望遠鏡ドームは、地上望遠鏡およびその観測装置を、太陽光、風、雨、湿気、雷、大気中の塵やゴミなどから保護する役目を持つ。観測時には望遠鏡の駆動を妨げず、観測可能なあらゆる天域に望遠鏡が向くことが可能なように設置されている。このため、望遠鏡ドームは一般に上部構造と下部構造に分かれている。上部構造は望遠鏡を覆う中空構造となっており、360度水平旋回可能で開閉可能なスリットを有している。回転する上部構造を持たず、観測時には望遠鏡指向範囲から完全に退避してしまうもの(スライディングルーフ式)もある。下部構造は上部構造を支えるビル構造部分からなる。下部構造には観測制御室や実験室、大型の観測装置などが置かれることが多いが、近年は、ドーム内の熱環境改善のために熱源となる構造物、特に人の居住空間は設置しないのが一般的になりつつある。
望遠鏡や観測装置のメンテナンスのためには、望遠鏡周囲に広い空間が確保されていると都合が良い。しかし、そのような空間を確保しようとすると、ドームが巨大化するとともにドームの熱容量が増大し、ドーム内が外気に追随しにくくなり、シーイングが悪くなる。ドーム内や望遠鏡が外気よりも暖かいと観測中に上昇気流が生じ、それが外気の冷たい空気と混じり合うことでシーイングを劣化させる。したがって、近年ではドームと望遠鏡の熱容量をできるだけ小さくし、さらに観測中には積極的に外気を取り入れて外気と速やかになじませること(フラッシングと呼ぶ)に注力するようになっており、ドームはできるだけコンパクトな構造にすることが主流である。
よりシーイングを向上させるために、ドーム構造を工夫してドーム内に空気が層流となって流れるようにしたものもある。具体的な例として、すばる望遠鏡新技術望遠鏡(NTT)で採用されている茶筒型のドームがある。次世代の超大型望遠鏡になると、望遠鏡主鏡に直接当たる風による主鏡変形が非常に深刻な問題となってくる。このため、たとえばTMT計画では、望遠鏡に当たる風を最小限にするためにキャロット型と呼ばれるドーム構造を採用することが考えられている。計画されているTMTドームでは、望遠鏡主鏡に直接風を当てずにフラッシングを行うために、ドーム側面にいくつもの窓を設けている。

2018年09月05日更新

関連画像

さまざまな望遠鏡ドームの形。(a)5mヘール望遠鏡ドームは典型的な半球型で、多くのドームに採用されている形である。(b)すばる望遠鏡ドームは茶筒型をしており、望遠鏡とドームは同期して一緒に回転する。望遠鏡の左右は壁になっており、ドーム内を流れる空気が層流になるように工夫されている。(c)TMTドーム(計画中)は、キャロット型と呼ばれる構造をしている。水平方向の回転と、その回転構造に載った斜めの方向の回転機構によって、円形のドーム開口を望遠鏡の動きに合わせて動かす。ドーム開口を望遠鏡口径と同じぐらいにまで絞れるため、ドーム内に流入する風を最小限に制限することができる。
http://www.astro.caltech.edu/observatories/palomar/ 5mヘール望遠鏡
https://subarutelescope.org/j_index.html すばる望遠鏡
https://subarutelescope.org/j_index.html TMT