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宇宙ひも

 

よみ方

うちゅうひも

英 語

cosmic string

説 明

時空の位相的欠陥の一種で、宇宙論的なスケールに広がる一次元のひも状の物体のこと。コスミックストリングともいう。通常は端を持たないため無限の長さを持つか閉じたループをなし、光速に近い速度で運動しながら、交差によって組み替えを起こしながら進化する。長いストリング(ひも)からは宇宙膨張時間に対して常に一定の比率で閉じたループが形成され、ループは重力波を出して崩壊するため、宇宙ひもは常に宇宙のエネルギー密度に対して一定の比率を占めることになる。したがって、宇宙の進化とともにスケール不変な密度ゆらぎを生成する。
 位相的欠陥は対称性の自発的破れを伴うスカラー場の相転移に伴って生成しうるが、宇宙ひもは特に、回転対称性が破れるような、相転移後の真空多様体が単連結でないときに生成しうる。異なる真空を閉曲線でつないでいくと、必ずしもそれを1点に収縮させることができず、その中心にエネルギーの高い領域がひも状に形成されるからである。大統一理論のエネルギースケールで起こった相転移によってできた宇宙ひもにより現在の宇宙の構造が形成された、とする説はかつて精力的に研究されたが、現在では宇宙マイクロ波背景放射の非等方性の観測により、この説は棄却されている。その一方、より低いエネルギーのストリングがもたらす観測的影響は現在も研究されている。しかし、パルサーのタイミングデータに基づく重力波背景放射の振幅の制限から、ストリングのエネルギースケールには強い制限が課されるようになってきているため、これを回避するメカニズムが必要とされる。

2018年03月06日更新

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