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気候モデル

 

よみ方

きこうもでる

英 語

climate model

説 明

気候の構成要素である大気と海洋の中で起きるさまざまな事象を物理法則を基礎に定式化して, 気候を再現したり予測したりするコンピュータの中に作られた擬似的な地球のモデル(計算プログラム)。気候モデルでは、連続的に温度や密度などの性質が変化する大気や海洋を、細かな格子(ブロック)に分割し、その格子の中では状態(温度、密度、速度など)が一定と仮定して、一つの格子の状態が隣り合う格子にどのように影響するかを、微分方程式を用いて計算する。
かつては大気モデルと海洋モデルなど気候システムの要素ごとにモデルが作られていたが、コンピュータの発達により、大気と海洋を結びつけた大気海洋結合モデルが可能となった。人為的な気候変動のリスクに関する最新の科学的・技術的・社会経済的な知見をとりまとめて評価し、各国政府に助言と忠告を行う「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が数年おきに発表する報告書は、世界の研究機関における多数の気候モデルの予測に基づいており、その作成と査読には、世界中の千人規模の研究者が参加している。2021年のIPCCの第6次報告書では「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない。大気、海洋、雪氷圏及び生物圏において、広範囲かつ急速な変化が現れている。」としている。
1960年代にコンピュータの数値計算による気候モデルの研究に取り組み、大気海洋モデルを開発し、1989年に大気中の二酸化炭素濃度の増加が地球温暖化に影響することを実証した真鍋淑郎博士は2021年にノーベル物理学賞を受賞した。

2021年12月08日更新

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    * 自然影響のみでは観測されている急激な気温上昇を説明できず、人為影響を含めると説明できることを示す図。CMIPは気候モデルの名前。
    住明正「地球温暖化」、シリーズ現代の天文学第1巻、岡村・池内・海部・佐藤・永原編『人類の住む宇宙』第2版 6.5節 図6.39 (日本評論社)
    (原図は IPCCの第5次報告書)