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ビームスイッチ

 

よみ方

びーむすいっち

英 語

beam switching

説 明

スイッチング観測の1つで、電波観測でよく用いられる。アンテナの主鏡は動かさずに副鏡またはビーム伝送系中の反射鏡を動かして主ビームの方向を変え、目的天体の観測点(ON点)とそこから少し離れて天体からの電波がアンテナのビームに入らない点(OFF点)を交互に観測する。ON点では天体からの電波に加えて大気や望遠鏡からの電波も受信されるが、OFF点では大気や望遠鏡だけの電波が受信され、天体からの電波は含まれない。したがってON点を観測したときの受信電波からOFF点を観測したときの受信電波を差し引くと天体からの電波だけを取り出すことができる。可動部分を小型化しやすいので高速切替が可能となり、大気放射や受信機の利得が変動するよりも速くON点とOFF点を交互に観測できるので、そのような変動の影響を受けにくい。また、ON点とOFF点の切り替え時間が短いことから、時間的な観測効率も高くできる。一方、主鏡の光軸中心から離れた点で切替を行うため、離角が大きいと光学的な収差によりビームパターンが変形し、差引がうまくいかなくなる恐れがある。これに対して、ビームの離角が小さなビームスイッチを用いて、離角方向に掃引観測したデータを後処理することで、ビームスイッチの利点を活かしたまま広い領域の観測を行う方法も一部の望遠鏡では実用化している。なお、副鏡を動かすビームスイッチは、副鏡チョッピングと呼ばれることも多く、サブミリ波観測や赤外線観測で用いられる。

2018年03月22日更新

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