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人工粘性

 

よみ方

じんこうねんせい

英 語

artificial viscosity

説 明

星間・銀河間などのガスの運動とその物理状態の時間変化(物理学では時間発展と呼ぶことが多い)は、粘性なし(非粘性)の流体力学の偏微分方程式でよく表される。コンピュータシミュレーションで、この方程式は、時間・空間両方に有限幅に分割した格子を代表する物理量の時間発展として計算される。そのうち、元の方程式の偏微分を差分で近似して進化を計算する方法が差分近似解法である。

ところで流速が音速を超える非粘性の流体では、しばしば、衝撃波が発生し、圧力、密度、速度などの物理量に衝撃波をまたいで飛びを生じる。しかし、飛びでは偏微分の値は発散するため、非粘性流体の差分近似解法では取り扱えず、数値不安定を生じる。この数値不安定を抑えるために元の方程式に人為的な粘性項を導入することが考案された。これを人工粘性と呼ぶ。また、差分法の打ち切り誤差が同種の項に相当する場合も同様に人工粘性と考えることができ、現在では衝撃波を含んだ流れを正確に記述する様々な方法が提案されている。人工粘性が大きすぎると解が不自然になめらかになって、微細な構造が消えたり、シャープな構造がなまったりする、つまり、空間的に急変する構造が再現できないという弊害がある。

2024年01月11日更新

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