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加速膨張

高

よみ方

かそくぼうちょう

英 語

accelerated expansion

説 明

宇宙はビッグバン以来膨張を続けている。宇宙膨張を支配するものが通常の重力であれば、物質の引き合う性質により膨張は必ず減速するはずである。しかし20世紀終わりに、遠方にあるIa型超新星の観測によって、実際には宇宙の膨張が加速していることが示された。このことは、引力だけが働く通常の重力とは異なる力が宇宙の膨張に寄与していることを示唆する。この観測だけでなく、宇宙膨張の時間変化に感度を持つ大多数の観測は、どれも加速膨張する宇宙を支持している。
加速膨張の根本的な原因については、現在のところ確定的な結論は出ていない。最も単純な説明は、もともとアインシュタインが静止宇宙モデルをつくるために導入した宇宙定数によるものである。正の宇宙定数は宇宙全体に斥力を及ぼす。適当な値の宇宙定数の存在を仮定すると、観測に矛盾しない加速膨張を説明することができる。
素粒子理論の基礎である場の理論においては、場のゼロ点エネルギーに起因する真空エネルギーが自然に現れ、これは宇宙定数の役割をする。だが素朴に期待されるそのエネルギーの値は、観測的な宇宙定数とみなすには120桁以上も大きなものになる。これは素粒子理論における宇宙定数問題として長らく知られているものである。これまで真空エネルギーは何らかの対称性により完全に打ち消し合っているものと暗黙のうちに考えられていた。だが有限の値を持つとなると、その不自然さはさらに際立つことになった。
加速膨張の原因としてはその他にも、未知のスカラー場による説明や、余剰次元宇宙モデルをはじめとした一般相対性理論の修正による説明、人間原理による説明など、いろいろな考え方が提案されているが、どの説明も十分満足のいくものとは考えられていない。ダークエネルギーと名付けられた加速膨張の原因は、現代物理学の未解決問題である。

2018年08月15日更新

関連画像

*宇宙定数のない場合(Λ=0)と正の宇宙定数がある場合(Λ>0)の宇宙モデルの振るまい。縦軸は宇宙のスケール因子、横軸は時間である。詳細はフリードマン宇宙の項を参照。
*遠方のⅠa型超新星の観測データが加速膨張するモデルを支持していることを示す図。青線より右側にあるのはダークエネルギー(宇宙定数)がないモデル、左側にあるのはダークエネルギーがあるモデル。横軸の「現在」より左にある小さな点が遠方のⅠa型超新星の観測データである。
(「パリティ」2003年12月号の図を基に製作)
遠方のⅠa型超新星の観測結果が宇宙の加速膨張モデルを支持していることを示す図。上の図の一部を異なるパラメータ空間で表したもの。縦軸はⅠa型超新星の明るさ、横軸は赤方偏移である。
https://www.kek.jp/ja/newsroom/2011/12/16/1600/
(原図はA.G.Riess et al, Astrophys.J. 560 (2001) 49-71)